貴金属市場の動向

2024年2月

株式会社徳力本店 地金部 地金課 門脇 敬太

  • 金市場の動向
  • プラチナ市場の動向
  • 為替市場の動向

金市場の動向 2月の動き
金価格チャート
ドル建て金相場
 2月ドル建て金相場は、2,040ドル付近で始まりました。1日公表の週間米失業保険申請件数が悪化したことや、米地銀株が経営不安により大幅続落となる中、安全資産として買われ、2,065ドル付近まで上昇しました。
 ところが、2日公表の1月米雇用統計が非常に良好な結果となると、売り優勢の展開となり、2,030ドルを割り込みました。5日には、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が早期利下げに消極的な姿勢を示したことや、1月米ISMサービス業購買担当者景況指数(PMI)が予想を上回り、利下げ期待が後退。ドル高・米長期金利高が進行する中、2,010ドル付近まで売られました。
 ただ、シカゴ連銀総裁が3月の利下げ可能性を排除しないと発言していたこともあり、その後は買いに転じ、下げ幅を縮小しました。7日には米地銀株が再び不安定な動きをしたことや、複数のFRB高官から年内2~3回の利下げを見込み、インフレ低下継続に楽観的との発言等もあり、買戻しの流れが継続。一時2,040ドル台を回復しました。
 注目されていた13日公表の1月米消費者物価指数(CPI)は、総じて市場予想を上回り、インフレへの警戒が強まると、再び売り優勢の展開となりました。ドルが急騰する中、2,000ドルを割り込み、14日には昨年12月以来の安値となる1,985ドル付近を付けました。
 しかし、15日公表の1月米小売売上高が予想を下回ると2,000ドルを回復。16日公表の1月米卸売物価指数(PPI)は予想を上回りましたが、ドル高進行は限られ、買いが続きました。20日には1月米CPI公表前の水準となる2,020ドル付近まで値を戻しました。
 21日公表の1月米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、参加者の大半が早期の利下げへの警戒感を示したことが判明しましたが、目立ったサプライズはなく無難に通過したため、横ばいで推移。その後は、ドル安に支えられる中、買い優勢となり、23日には2,040ドル付近まで上昇しました。
 月末にかけては、世界の主要株式市場が堅調に推移する中、上昇一服となりました。29日公表の1月米個人消費支出(PCE)デフレーターは予想通りの結果となり、伸び率も前月から縮小、インフレ懸念が和らいでいることが示されました。これを受け、一時2,050ドル付近まで上昇する場面もありましたが、その後はやや水準を戻し、2,045ドル付近でこの月の取引を終えました。
今後の見通し
 早期米利下げ期待の後退が続き、ドル高・米長期金利高が進んだ中でも、底堅さが見られます。背景には中央銀行の買いや、中東情勢の緊張や中国株安を受け、安全資産としての需要が高まっているためと思われます。今後は、FRBがデータ次第で政策判断を行うと表明している通り、日々の米経済指標に反応する傾向がより強まると思われますが、価格下落局面では中央銀行の買いや安全資産としての買いがサポートになると思われます。

プラチナ市場の動向 2月の動き
プラチナ価格チャート
ドル建てプラチナ相場
 2月ドル建てプラチナ相場は、930ドル付近で始まりました。2日公表の1月米雇用統計後は、ドル高進行に伴い、900ドルを割り込みました。その後は、急落の反動やFRB高官から利下げに前向きな言及があり、900ドル台を回復する場面もありました。
 しかし、7日には同族メタル:パラジウムが2018年以来の安値を更新したことが圧迫材料となり、昨年11月以来の安値となる875ドル付近まで下落。また、8日公表の1月中国CPIが14年ぶりの低下率となり、同国の景気回復遅れへの懸念が一段と強まったことや、ドル高の進行により、9日には今年の安値となる865ドル付近を付けました。
 13日には、安値更新後に売りが一巡したことや、米国株高を好感した買いもあり、900ドル付近まで値を戻しました。ただ、同日の1月米CPI公表後は、ドル高・米長期金利高が進行し、再び月間安値水準まで下落しました。
 その後は、ドル高一服や金の上昇、パラジウムの下げ止まりなどが支援材料となり、16日には900ドルを回復しました。中国が春節明けとなったことや、20日の同国利下げ、米国の対ロシア制裁予告なども買い材料となり、一時915ドル付近まで上昇しました。ただ、米国が23日に発表したロシアへの制裁対象に金属は含まれておらず、パラジウムが上げ一服となると、プラチナも900ドルを割り込みました。
 月末にかけてはドル・米長期金利の高止まりやパラジウム安により、再び下落傾向となり、875ドル付近で取引を終えました。
今後の見通し
 下落トレンドが続くパラジウムに追随安となった他、プラチナの最大需要国である中国での株安進行など、需要面の懸念も高まり、弱い展開が続いています。白金系貴金属(PGM)価格低迷は、鉱山経営にも深刻な影響を及ぼし始めており、ある大手鉱山会社CEOは、PGM市場の状況は30年来で最悪と、悲観的な見解を示しました。ただ、中国が株価、景気対策を相次いで打ち出していることや、主要国の株式市場は好調であるため、今後は徐々に下げ止まり、下値を固めていくと思われます。



為替市場の動向 2月の動き
ドル円為替チャート
ドル円為替相場
 2月ドル円相場は、146.90円付近で始まりました。1日には米地銀株を巡る信用不安や、米労働関係指標の悪化を背景に、米長期金利が約1か月ぶりの水準となる3.81%台まで低下。145.90円付近まで円高に進みました。
 しかし、2日公表の1月米雇用統計が堅調な結果となると、一転して148円台まで急速に円安に進みました。5日には、パウエルFRB議長が早期の利下げに消極的な姿勢を示したことや、1月米サービス業PMIが強い結果となったこともあり、昨年11月以来の円安・ドル高水準となる148.90円付近を付けました。
 その後も、8日には内田日銀副総裁が、マイナス金利解除後も緩和的な金融環境を維持する考えを示したことや、同日公表の週間米失業保険申請件数が良好な結果となったことも加わり、149円台半ば付近まで円安に進みました。また、13日公表の1月米CPIが、米インフレの根強さを示し、市場での米利下げ開始観測が6月まで後退すると、今年最大の円安水準となる150.90円付近まで円安に進みました。
 しかし、14日には財務省の神田財務官による円安けん制発言を受け、政府・日銀による為替介入への警戒も意識される中、円売りは一服。15日公表の1月米小売売上高が予想を下回ると、149円台半ば付近まで円高に進む場面もありましたが、その後は150円丁度付近での値動きが続きました。
 21日公表の1月米FOMC議事要旨では、早期利下げへの慎重姿勢が示され、米長期金利が昨年11月以来の水準となる4.35%台まで上昇。緩やかな円売りが継続し、26日には150.85円付近まで円安に進みました。ただ、日銀の金融政策修正期待や、為替介入への警戒感もあり、概ね150円台を中心とした小幅な値動きが続きました。
 月末にかけては、20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議の草案で、世界経済について楽観的な見方が示されたことや、28日にボウマンFRB理事が、利下げ開始は時期尚早と述べ、米長期金利が高水準で推移する中、150円台後半での推移が続きました。
 ただ、29日には高田日銀審議委員による金融政策正常化を示唆する発言を受け、150円割れまで円高に進みました。また、1月米PCEデフレーターでインフレへの懸念が後退すると、さらに円買いが進み149.20円付近を付けました。その後は、米国株高などを眺めて150円丁度近辺でこの月の取引を終えました。
今後の見通し
 150円を超える円安水準となると、政府・日銀当局者からの円安けん制発言が頻発するようになりました。また、日銀関係者からは金融政策修正・正常化を期待させる発言も出ています。そのため、一段の円安進行は限られると思われます。ただ、日本の緩和的な金融環境は続くことへの言及や、米利下げ見通しの後退もあり、円安基調での推移が続くと思われます。

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