貴金属市場の動向

2019年3月

石福金属興業株式会社 管理部 資材グループ 鼻渡 総一郎

  • 金市場の動向
  • プラチナ市場の動向
  • 為替市場の動向

金市場の動向 3月の動き
金価格チャート
ドル建て金相場
 1,310 ドル付近でスタートした3 月の金相場は前月末からの流れを引き継ぎ、続落する展開。3 月1 日に設定されていた米中両国による貿易協議の期限延長が発表され、交渉の先行きに楽観的な見方が広がったことで、安全資産としての金は売りが先行、4 日には1,280 ドル台まで下落した。その後、欧州中央銀行(ECB)の定例理事会で2019 年に利上げを停止し、2020 年以降に先送りする方針を決定する等、外国為替市場でドル高・ユーロ安が進行する中、1,280 ドル台半ばで推移する展開が続いた。
 しかし、8 日に2 月の米雇用統計が発表されると一転、金価格は上昇。景気動向を反映するとされる非農業部門就業者数が市場予想を大幅に下回ったことで、米国の景気先行き懸念から安全資産としての金買いが先行し1,290 ドル台を突破。13日には英国のEU 離脱が3 月29 日に迫る中、英議会下院が英政府とEU がまとめた離脱修正案を否決、ブレグジットを巡る先行き不透明感から、1,300 ドル台まで上伸した。その後、14 日に英議会が「合意なき離脱」を拒否する決議案を可決した事で一旦は1,300 ドル台を割り込むも、対ユーロでのドル安基調を背景に15 日には1,300 ドル台に回復。19、20 日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え材料に乏しい中、小幅な値動きが続いた。
 20 日のFOMC の声明では、今年の利上げ想定回数を「ゼロ」に引き下げ、年内の利上げ見送りを決定。バランスシートの縮小についても5 月から減額し、9 月には完全停止するとした。こうしたハト派的な声明内容からドルが全面安になったことに加え、22 日に発表された仏、独の製造業の景況感を示す経済指標が市場予想を下回ったことで、欧州・米株相場が下落。さらに米国債の長短金利の逆転現象(逆イールド現象)が11 年半ぶりに発生。景気後退のシグナルとされるこの現象を背景に株価が下げ幅を拡大。こうした背景から金価格は続伸し、25 日は1,310 ドル台後半まで上伸した。
 その後は欧州経済の先行き懸念から、ドル高・ユーロ安が進行する中で金価格は上値が圧迫される展開に。27 日には欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が必要であれば利上げをさらに遅らせる用意があるとの発言もドル高を進行させ、金価格は続落。28 日にはパラジウムの大幅下落やトルコ等の新興国経済への懸念が金へ波及、金価格は1300 ドルを割り込んだ。29 日には英議会がEU 離脱案の3 度目となる採決を実施し、これを否決。欧州のEU 離脱の先行き不透明感が強まったことで、金価格は反発するも1,290 ドル台半ばで今月の取引を終了した。
今後の見通し
 FRB が年内の利上げ想定回数をゼロに引き下げ、ECB も利上げを2020 年以降に先送りする等、世界的な景気減速への懸念が一層高まっている中で、英国のEU離脱も予断を許さない状況が続くなど地政学リスクも散見される為、金相場は今後も底堅く推移する事が考えられる。

プラチナ市場の動向 3月の動き
プラチナ価格チャート
ドル建てプラチナ相場
 860 ドル台でスタートしたプラチナ相場は、前月末の上昇基調から一転、下落する展開。南アフリカで予定されていた鉱山労働者・建設組合連合(AMCU)のストライキ延期や、6 日に発表されたワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル(WPIC)による2019 年のプラチナ供給過剰拡大レポートが圧迫要因となり、820 ドル台まで下落。7 日のECB の利上げ年内停止の決定による外国為替市場でのドル高・ユーロ安や景気減速懸念による欧米株価の下落も下押し要因となり、8 日には810 ドル台まで下落した。
 その後、中国人民銀行総裁による景気刺激策表明による株高や、米労働省が公表した2 月の消費者物価指数(CPI)により対ユーロでドル安が進行した事で、13日には840 ドル台まで上伸するも、英国のEU 離脱を巡る議会採決で先行き不透明感が強まり、経済減速の懸念が深まる中で830 ドル台まで下落した。
 週明けの18 日以降は、19、20 日に開催されるFOMC を控え様子見ムードが広がる中、外国為替市場ではドル安が進行。FOMC 後に発表された声明がハト派的な内容であったことも、ドルが対主要通貨で全面安となる要因となり、これを受けてプラチナ価格は上昇。19 日に850 ドルを突破すると、21 日には870 ドル台まで急伸した。
 しかし、22 日に発表された3 月の独、仏の製造業購買担当者景況指数(PMI)が低水準な内容であったことで、欧州・米株価が大幅に下落。プラチナ価格も株安に追随する形で値を下げ、850 ドル台まで下落した。その後、買い戻しが入り860 ドル台まで上伸するも、パラジウムの大幅下落や新興国懸念による金価格急落につれて再び下落。月末には850 ドル台の値を付けて取引を終了した。
今後の見通し
 南アフリカでのストライキや電力問題等のリスク要因やETF への資金流入が現在の相場を支えていると考えられるが、2019 年も供給過剰が拡大する等、需要面での悲観的な見通しも依然根強い。価格上昇の局面はあれど、需要面での見通しに変化が見られない限り、上値の重い展開が継続すると考えられる。



為替市場の動向 3月の動き
ドル円為替チャート
ドル円為替相場
 111 円台半ばでスタートしたドル円相場は、前月末に発表された米国の昨年第4四半期国内総生産(GDP)が予想を上回る良好な内容であったことが引き続き材料視され、円売り・ドル買いの流れが先行。2 月の米ISM 非製造業景況指数等の良好な米経済指標もその流れを後押しし、112 円台まで上昇した。
 しかし、7 日のECB の定例理事会で2019 年中の利上げを断念し、2020 年以降に先送りする方針が決定されると、欧州経済の成長不安が再燃。翌日に発表された2 月の米雇用統計も、景気動向を示す非農業部門生産者数が市場予想を大幅に下回り、世界的な景気減速懸念から投資家のリスク回避姿勢が鮮明となる中で、ドルが売られ円が買われる展開となり、11 日には111 円台を割り込んだ。
 その後は英国のEU 離脱を巡る先行き不透明感から111 円台前半でもみ合う展開が続くも、14 日に英議会が「合意なき離脱」の採決で不支持を議決、米中貿易協議の進展期待も相まって15 日には再び111 円台後半まで上昇。以降、19、20日に開催されるFOMC を控え様子見ムードが広がる中111 円台半ばでの推移が続いた。
 FOMC 声明後は今年の利上げ想定回数を「ゼロ」に引き下げるなど、想定以上のハト派的な内容に円高・ドル安が進み、110 円台後半まで下落。さらに、22 日に発表された独、仏の製造業購買担当者景況指数(PMI)が予想を下回り、欧米株価の下落を眺めて25 日には109 円台後半まで円高が進んだ。その後、110 円台に再び乗せるも、トルコ・リラの急落等、新興国通貨下落に伴うリスク回避的な円買いや米国の長期金利低下を背景に概ね110 円台前半で推移。最終日に低下していた米国長期金利が反転、110 円台後半まで上伸しこの月の取引を終了した。
今後の見通し
 足元では円安方向に振れてはいるが、FRB が年内の利上げ想定回数をゼロに引き下げ、ECB も2019 年内の利上げを断念、英国のEU 離脱を巡る問題が山場を迎える等、リスク回避としての円買いが促される場面もあると想定され、方向感の定まらない展開となると考えられる。

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