貴金属市場の動向

2019年5月

株式会社 徳力本店 地金部 地金課 金塚 美智子

  • 金市場の動向
  • プラチナ市場の動向
  • 為替市場の動向

金市場の動向 5月の動き
金価格チャート
ドル建て金相場
 1,283 ドル付近で始まった5 月のドル建て金相場は、米連邦公開市場委員会(FOMC)待ちとなる中、同水準での小動きが続きました。
 注目のFOMC では、政策金利を据え置き。会合後のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見では、政策金利の当面据え置きを示唆。これまでのトランプ米大統領による利下げ圧力を受け、目先の利下げが期待された中、利下げ観測は後退。金は、1,270 ドルを割り込み、1,267 ドル付近まで大きく売り込まれました。
 3 日に公表の4 月米雇用統計では、非農業部門就業者数が26.3 万人増で市場予想を大きく上回ったほか、失業率は1969 年12 月以来約49 年ぶりの低水準まで改善。一方で、平均時給は、前月比・前年同月比共に低調。強弱入り混じる結果に反応は限定的だったものの、同日に公表の4 月米ISM 非製造業景況指数の低調な結果を受け、外為市場対ユーロでのドル高が一服。金は買いに転じ、1,280 ドル付近まで水準を戻しました。
 5 日には米国が中国からの輸入品2,000 億ドル相当に追加関税引き上げを行うことを表明。米中貿易戦争激化懸念が再燃する中、リスク回避の金買いが進みました。また、欧州連合(EU)では、成長率が前年から減速するとの見通しを示唆し、世界的な景気減速懸念が再燃。欧米株式が下落する中、1,292 ドル付近まで上伸しました。その後は、米中閣僚級通商協議への思惑が交錯する中、1,280 ドル~ 1,290ドル付近の狭いレンジ内での推移が続きました。
 10 日には、米国が対中国追加関税引き上げを正式に実施。中国側も報復措置の実施を表明。米中両国が報復合戦を繰り返し、貿易戦争激化懸念が広がる中、ニューヨークダウ平均株価が急落。金に「質への逃避」買いが入り、4 月上旬以来約1 か月ぶりに1,300 ドルの節目を回復しました。
 ただ、高値を更新したことによる利益確定の売りが入ったほか、ドル高に圧迫され、1,300 ドルの節目を割り込みました。また、米中貿易協議の先行きを見極めたいとの思惑や16 日に公表された米国主要経済指標、主要企業決算の良好な内容を受け、米国株式が大きく上昇。金売りに拍車が掛かり、1,280 ドルを割り込み、大きく水準を切り下げました。
 その後は、1,270 ドル台で膠着し、小動きが続いたものの、米国が中国一部主要企業との取引制限を表明し、米中貿易摩擦の更なる激化が懸念される中、世界的に株安が進行。金は買い優勢となり、1,280 ドル台まで水準を戻しました。
 月末にかけては、イタリア財政不安や英国の欧州連合(EU)離脱を巡る不透明感を背景としたドル高に押され、1,275 ドル付近まで水準を切り下げる場面が見られました。一方で、米国対中国に加え、米国- メキシコ間の貿易摩擦激化懸念再燃、世界経済減速懸念、米国利下げ観測などを受け、金買いが急速に進みました。1,275ドル付近から1,300 ドルの節目超えまで大きく水準を切り上げ、この月の取引を終えました。 
今後の見通し
 米国対中国やメキシコなどの貿易戦争が長期化の様相を見せていることや中東地域の地政学的リスク、世界経済減速懸念などを背景とした「質への逃避買い」に支えられ、底堅い推移が続くと思われます。

プラチナ市場の動向 5月の動き
プラチナ価格チャート
ドル建てプラチナ相場
 882 ドル付近で始まった5 月のドル建てプラチナ相場は、4 月米製造業景況指数の低調な内容を受け、米国株式が軟調推移となる中、売り優勢に。また、姉妹メタルであるパラジウムが大きく売り込まれていることも圧迫材料となりました。
 1 日の米FOMC 後のパウエルFRB 議長会見で、政策金利を当面の間据え置くことを示唆。利下げ観測が後退し、金が売り込まれたことでプラチナ売りが加速。850 ドル割れまで水準を切り下げました。
 3 日に公表の米雇用統計は強弱まちまちの内容だったものの、低調な平均時給や4 月米ISM 非製造業景況指数の低調な結果に外為市場ではドル高が一服。金が反発する中、プラチナも追随し、880 ドル台まで水準を切り上げました。
 5 日には米国が対中国への追加関税引き上げ方針を表明。欧州では、圏内成長率が減速するとの見通しを示唆。これらを背景に欧米株式が下落したほか、パラジウムの大幅安も重石となり、880 ドル付近から850 ドル付近まで大きく売り込まれました。その後は、パラジウムの反発や米国株式の堅調推移に支えられ、860 ドル付近まで水準を戻しました。
 しかし、米中両国が追加関税を巡り、報復合戦を繰り返す中、貿易戦争が激化するとの見方が浮上し、米国株式が急落。また、金が1,300 ドルの節目を割り込み、売り優勢となる中、プラチナも追随。外為市場対ユーロでのドル高も圧迫材料となり、860 ドル付近から820 ドル付近まで大きく水準を切り下げました。
 その後も米中貿易戦争長期化懸念を背景とした世界的な株安、プラチナ工業用需要の減退懸念、米国・中国・欧州の景気先行き不透明感などが圧迫材料となり、プラチナ売りが更に進みました。800 ドルの節目割れを試す付近まで売り込まれ、800 ドル~ 805 ドル付近での推移が続きました。
 月末にかけては、欧州諸国の政情不安を背景としたドル高のほか、米中貿易協議長期化懸念、米国- メキシコ間の貿易摩擦激化懸念再燃などから欧米株式が下落。ドル高・株安がプラチナ売りを加速させ、800 ドルの節目を割り込み、795 ドル付近でこの月の取引を終えました。
今後の見通し
 上場投信(ETF)や先物市場への投資資金の戻りが見られたものの、プラチナ主要消費国である欧州や中国の景気減速懸念や供給過剰予測などのネガティブ要因が残る状況下では、上値重い推移が続くと思われます。また、プラチナ独自の新規手掛かり材料にも乏しいため、姉妹メタルである金やパラジウムの値動きに追随する場面も見られると思われます。



為替市場の動向 5月の動き
ドル円為替チャート
ドル円為替相場
 111.40 円台で始まった5 月のドル円相場は、日本が大型連休中で市場参加者が少ない中、積極的な商いが控えられたほか、米FOMC の結果を見極めたいとの思惑から、狭いレンジ内でのもみ合いが続きました。
 注目のFOMC では、政策金利を据え置き。会合後のパウエル議長会見では、金利の当面据え置く意向を示唆。利下げ観測が後退する中、円売りが優勢に。また、3 日に公表の4 月米雇用統計では、非農業部門就業者数が3 か月ぶりに堅調の目安となる20 万人増を上回り、失業率が49 年ぶりの低水準まで改善したことから、円売りが加速。一時、111 円台後半を付けたものの、物価上昇の目安となる平均時給が低調だったことや米国長期金利の低下を眺め、円買いに転じました。
 5 日には、米国が対中国の追加関税引き上げ方針を表明。米中貿易協議妥結への期待感が後退する中、円買いが加速し、110 円台前半まで円高に進みました。その後は、米中閣僚級協議の先行きが予断を許さない状況下で、リスク回避の円買いが続き、109 円台後半を付ける場面が見られました。
 13 日には、10 日に米国が実施済みの追加関税引き上げに対し、中国側が6 月から報復措置を発動すると表明。米国も更なる引き上げを示唆し、報復合戦の様相を呈する中、109 円割れを試す付近まで円高に進みました。その後は、貿易摩擦激化への過度な懸念が後退する中、円売りが優勢となり、109.70 円台まで円安に進みました。
 15 日には、4 月米小売売上高などの低調な内容を受け、景気先行きに対する警戒感が浮上する中、109 円台前半まで円高に進む場面が見られるも、労働関連指標や主要企業の好決算を受け、109 円台後半まで水準を戻しました。また、米国が輸入自動車への追加関税導入判断を最長半年延長すると正式に表明。カナダやメキシコに対する鉄鋼等の輸入関税撤廃方針も報じられる中、円売りが続き、110円台に乗せました。
 その後は、英国の欧州連合(EU)離脱を巡る先行き不透明感、米中貿易摩擦の更なる激化懸念などを背景にリスク回避の円買いが優勢に。米国株式の軟調推移なども円買いを加速させ、110 円を割り込み、109 円台半ばまで円高に進みました。
 月末にかけては、米中貿易協議長期化への懸念のほか、米国- メキシコ間の貿易摩擦激化懸念の再燃、米国利下げ観測の台頭などを背景に円買いが優勢の展開が続きました。1 月中旬以来約4 か月ぶりの円高水準となる108 円台半ばでこの月の取引を終えました。
今後の見通し
 米国対中国他の貿易戦争長期化懸念、欧州諸国の政情不安、世界的な景気減速懸念、中東地域の地政学的リスクなど不安定要素が多く燻る中では、円買い優勢の地合いが続くと思われます。

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