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「成長鈍化と根強いインフレを示したGDP速報値、
乱高下の後に金は反発」

2024/04/26
Market Strategy Institute Inc.代表
金融・貴金属アナリスト
亀井 幸一郎

「成長鈍化と根強いインフレを示したGDP速報値、乱高下の後に金は反発」
(2024年4月26日記)

4月24日のNY市場の金価格は4営業日ぶりに反発した。朝方発表の2024年1~3月期の米国内総生産(GDP)速報値を受け、債券市場や株式市場が荒れる中で金市場も売り買いが交錯し上下に振れた。しかし、終盤には米経済の先行き不透明感や中東情勢を受け買いが優勢となりプラス圏に浮上した。NYコメックスの通常取引は、前日比4.10ドル高の2342.50ドルで終了した。

この日の金市場は乱高下した。NY時間外のアジア時間に前日からの売りが先行する形で一時2316.40ドルを付けることに。ただし、売りが一巡すると水準を切り上げながら相場は進行し、NY早朝には2340ドル台に乗せるところまで復帰。NY時間に入り、発表されたGDP速報値が成長鈍化を示す一方で、インフレ再燃への不安を招くものとなったことで、米長期金利が急伸。ドルも一時買われ金はいったん2330ドル割れまで売られた。ただし、ここでも売りが一巡すると反転上昇し一気に2350ドルを超え一時2357.60ドルまで駆け上がった。その後買い一巡とともに20ドルほど押し戻され再び2330ドル台半に戻ることに。終盤はやや買いが先行しプラス圏に浮上し、そのまま終了した。

ここまで堅調な経済指標の中でインフレの鈍化が進み、米国経済のソフトランディング(軟着陸)期待が強まってきたが、GDP速報値はそうした楽観に水を差す内容となった。2024年1~3月期のGDP速報値は前期比年率1.6%増と、伸びが前四半期の3.4%増から大幅に鈍化し、ほぼ2年ぶりの低い伸びとなった。市場予想の2.4%増も下回った。一方、GDP統計と合わせて発表された1~3月期の個人消費支出(PCE)物価指数でエネルギー・食品を除いたコア指数(コアPCEデフレーター)は、前期比年率3.7%上昇と、23年10~12月(2.0%)から加速していた。

インフレ圧力の根強さに反応して米国債は売られ10年債利回りは一時4.741%と昨年11月1日以来の水準まで上昇。ドル指数も一時106ポイントに接近した。金市場はこの流れの中で売られたものの、その後、成長率鈍化の中でのインフレの根強さは、いわゆるスタグフレーションを思わせ、株式や債券などに打撃となる経済環境を意味することから、むしろ安全資産としての金が優位との見方から買いが入ったとみられる。さらにレバノンを拠点とするヒズボラとイスラエルの国境を越えての交戦が激化との話など、中東情勢を巡る緊張の高まりも金の買い要因となった。
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