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「ドル安の中で金は急反発。昨年11月22日以来の高値」

2017/01/18
Market Strategy Institute Inc.代表
金融・貴金属アナリスト
亀井 幸一郎

「ドル安の中で金は急反発。昨年11月22日以来の高値」(2017年1月18日記)

1月17日のNY市場の金価格は、大幅反発となった。この日予定されていたメイ英国首相の欧州連合(EU)からの離脱を巡る演説を前に、アジアの時間帯から為替市場を中心に警戒感が先行する中で金市場では買い気が高まることになった。また、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙とのインタビューで、トランプ次期大統領がドル高をけん制する発言をしたと伝わったことも、金市場の押し上げ要因となった。

NYコメックスの通常取引は、前日比16.70ドル高の1212.90ドルで取引を終了した。終値ベースでの1200ドル台は、昨年11月22日以来となる。NY時間外のロンドンの取引時間に一時1218.90ドルまで買われたのは、メイ首相の演説に反応してのものだった。

注目度が高かった17日のメイ英国首相の演説は、結果的には事前予想に沿った内容となった。先行して15日付の日曜紙サンデー・タイムズが、移民の制御を回復することを優先するために「EU単一市場と関税同盟から脱退する意思を明確にする」と報じていたことから、市場では警戒感が高まりポンドが急落するなどの動きがみられていた。また、17日の内容も直前に複数のメディアが演説の草稿を報じていたことも、内容がEU単一市場からの完全撤退という、いわゆるハード・ブリグジット(Hard Brexit)にもかかわらず市場の反応は限定的なものとなった。手続きを経てEUサイドとの交渉が始まるが、英国とEU間の合意を、最終的に議会両院の採決にかける意向を示したことが、英国やEUが置かれる環境の急変にいたらないという見方につながり懸念を抑えたとも言えそうだ。

しかし、離脱して英国独自の貿易協定を結ぶ自由を得るとしたものの、離脱表明から2年以内に合意をして現状に沿った協定を結ぶことは困難とされている。また、現在ロンドンに欧州の拠点を置くグローバルな金融機関は、EU域内でも同じ活動が出来る権利(パスポート)を有しているが、それが出来なくなることから、そのロンドン拠点の縮小が予想されている。欧州金融の中心地としての地盤沈下を意味し、英国経済への悪影響は避けられないとみられる。今後の離脱交渉過程でトランプ米新政権が影響力を行使し、離脱交渉を促すとの見方もあり、この点でのEUサイドの警戒感も強いようだ。方針は示されたものの、これから事態は本格的に動き出すということに過ぎない。

いずれにしても警戒(リスク・オフ)モードの中でドル安、金高が進んだが、トランプ次期大統領がWSJ紙とのインタビューで、「ドルが強すぎるため、米国企業は中国と競争することが出来ない」と語ったことも、この流れを後押しした。とりわけ、この発言が当選後初めてドル高に懸念を表明したものであることが市場の反応度を高めたようだ。また、トランプ次期政権の経済顧問で政権移行チームのメンバーのアンソニー・スカラチーム上級顧問が、現在開かれているダボス会議(国際経済フォーラム)のパネルディスカッションで「米国はドル上昇に注意すべき」と発言したと伝えられたことも、新政権のドル高けん制が意識されドルが売られたとみられる。
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