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「雇用者数上振れの5月米雇用統計受けNY金反落」
- 2023/06/05
Market Strategy Institute Inc.代表
金融・貴金属アナリスト
亀井 幸一郎「雇用者数上振れの5月米雇用統計受けNY金反落」(2023年6月5日記)
- 6月2日のNY市場の金価格は反落となった。予想を大きく上振れた5月米雇用統計の結果を受け米2年債と10年債利回りはともに急伸。ドルも主要通貨に対し急伸しドル指数(DXY)は103ポイント台前半から104ポイント超に上昇。一方で、NY金は30ドル方水準を切り下げることになった。NYコメックスの通常取引は前日比25.90ドル安の1969.60ドルで取引を終了した。
昨年来何度か見られてきた米雇用統計の予想比上振れを受けた連邦準備理事会(FRB)の利上げ継続観測の高まりが、利上げサイクル終盤とみられる足元のタイミングでも起きることになった。先週は次期金融政策担当副議長に指名されているFRBのジェファーソン理事らが、6月の利上げ見送りに前向きな姿勢を示したことから、利上げ政策の終息を見込む動きの中でNY金は一時2000ドルを上回るところまで買われていた。2日もNY時間外のアジアの午後早々に2000.50ドルまで買われたが、それ以降は1990ドル台半ばの狭いレンジで推移。NY早朝発表の雇用統計の結果を受け、下げ足を速めた。通常取引終了後のNY時間外取引では一時1963.70ドルまで売られ、週末の取引を1964.30ドルで終了した。ほぼ安値引けに近い形での終了といえる。
発表された5月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が33万9000人増と2カ月連続で加速し、市場予想(ロイター調べ)の19万人増を大幅に上回った。医療・社会支援、レジャー・接客などサービス業を中心に幅広く雇用が増えた。4月分は25万3000人増から29万4000人増に上方修正された。3月分も5万2000人上方修正された。一方、失業率は前回の3.4%から3.7%と7カ月ぶりの水準に上昇。時間当たり平均賃金は前月比0.3%上昇、前年同月比4.3%上昇と、ともに前月から伸びが鈍化した。
雇用者増加数を見る分には、なお過熱を思わせる内容といえるが、細目からは軟化の兆しが示されているとされる。そのため今回の結果を受けてもFRBによる6月利上げは見送りとの見方が大勢を占めている。
インフレとの関連で平均時給の伸び率がまず注目されるのは毎回のこと。引き続き鈍化傾向を示し、インフレの鎮静化を示唆した。今回注目されたのは失業率の前月からの上昇幅。前月比0.3%ポイントの伸びは20年4月以来の大きさで、失業者数は5月に前月比44万人増加となった。新型コロナウイルス禍が始まった直後に記録的に急増した時期があったが、それに次ぐ大きさとなった。FRBはこの上昇に注目するとの指摘がある。さらに、週平均労働時間が34.4時間から34.3時間に低下し、やはり20年4月以来の低水準となったこと。景気が弱まり始めると、雇用主は人員を削減するよりまず労働時間を減らす傾向があるとされる。企業は採用に熱心だが見た目ほど需要は強くない、との指摘がある。
来週13~14日の日程で開かれる連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、すでにFRB関係者は発言を控えるブラックアウト期間に入っており、雇用統計に対する当局の見解を見極めることはできない。市場では雇用統計の結果は総じて6月利上げ見送りの考えを変えるほど明確な強さを示したものではなかったというのが大勢となっている。ただし、今後の指標次第ではその次の7月会合での利上げ再開の可能性は否めないことから、先週末の金市場では終盤にかけても売り圧力は止まなかった。
