DAILY 市況解説NY市場を中心に市場動向・トピックをお伝えします。


※登録いただいたメールアドレスは情報配信以外には利用しません。

「米3連休を前にNY金は史上最高値更新で終了」

2024/03/29
Market Strategy Institute Inc.代表
金融・貴金属アナリスト
亀井 幸一郎

「米3連休を前にNY金は史上最高値更新で終了」(2024年3月29日記)

3月28日のNY市場の金価格は最高値を更新して連休前の取引を終了した。NYコメックスの通常取引は前日比25.70ドル高の2238.40ドルで終了。終値および取引時間中のこれまでの高値をともに更新した。その後のNY時間外取引では、さらに上値を伸ばし一時2256.90ドルと最高値の更新を続け、2254.80ドルで時間外取引は終了した。時間外取引ではあるものの、ほぼ高値引け状態でテクニカル的には、上昇基調の強さを表している。

かといって28日の市場では何か金市場を刺激する手掛かり材料が出たわけではない。昨日少し触れたようにむしろ売りを誘うような材料が出ていた。

27日の米東部時間18時に始まったエコノミック・クラブ・オブ・ニューヨークでのウォラー連邦準備理事会(FRB)理事の講演は、「まだ急ぐことはない」というタイトルからも事前に注目を集めていた。今年1、2月の消費者・生産者物価指数が上振れしたことを受け、「最近のデータを受けて、私の見解では利下げの全体的な回数を減らすか、さらに先送りするのが適切だ」と発言。主な市場取引終了後の発言ゆえに、28日の株式市場の反応が注目された。27日に過去最高値を更新して終えていたS&P500種株式指数は、28日も連日で高値を更新。のみならずダウ30種平均株価も28日は最高値を更新して終了した。

金市場の方は28日NY時間外のアジア時間こそ売りが優勢の流れとなったものの、ロンドンの午前、NY早朝から騰勢を強め、通常取引開始後の早い段階で2230ドル台の乗せ、午後に入り2240ドル台に乗せ終盤は切り上げた水準を維持し、通常取引は終了。前述したように29日はイースター(復活祭)グッド・フライデーで休日となる関係で3連休を前にした時間外取引の終了間際に急伸することになった。

つまり、株式市場、金市場ともにウォラー発言は無視したような展開となった。昨日は史上最高値の更新を続ける米株式市場について「時期はともかく次の政策方向は利下げということを基本シナリオに据え」ていると書いたが、ウォラー発言はこの範囲に入るものではある。金市場については、米利下げ期待のみならず欧米の中央銀行全般が利下げを視野に入れていることもある。さらに地政学的緊張の高まりも上昇の背景にある。

ウォラー発言の影響が出たと見られるのは為替市場で、28日は対ユーロでのドル高が目立った。ユーロは一時1.0775ドルと5週間ぶりの安値を付けた。その結果、ドル指数は一時104.727と約1カ月半ぶりの高値まで上昇し、104.546で終了。それでも金市場への影響はなかった。NYコメックスの「取組」と日本語表記される未決済取引の推移を見ると、中心となっている取引(現在6月物)は過去2週間(11営業日)で約12万枚(1枚=100オンス)もの増加となっている。つまり新規資金の流入が続いている。3連休を控えた28日も新規の買いが水準を押し上げたとみられる。
29日は祭日ながらFRBがインフレ指標として重視する2月の個人消費支出(PCE)物価指数の発表が控える。仮に上振れとなった場合、一般的に金価格は下押すことになるが、結果に対する週明け4月1日の反応は、今後を見極める試金石と言ったところか。29日はパウエルFRB議長の講演も予定されている。

※本文にもあるように本日29日のNY市場は休場となります。したがって4月1日の更新・配信はありません。
PAGE TOPへ