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「米雇用統計は強弱入り交じる内容、リスク要因多く金は反発」

2021/12/06
Market Strategy Institute Inc.代表
金融・貴金属アナリスト
亀井 幸一郎

「米雇用統計は強弱入り交じる内容、リスク要因多く金は反発」(2021年12月6日記)

前週末12月3日のNY市場の金価格は反発となった。注目の11月米雇用統計は、非農業部門の雇用者増加数が市場予想の半分にも満たない数字になる一方で、失業率は大幅に低下し2020年2月以来の低水準になるなど強弱入り交じる内容となった。さらに新型コロナウイルスの変異種オミクロン株の感染者は米国内でも増加が伝えられ、感染拡大への懸念が市場センチメントを冷やした。ワクチンや治療薬の有効性が示されるまでの時間が不透明で、経済活動の縮小が懸念されることから、この日のNY市場は再びリスクオフ・センチメントに覆われることになった。こうした中でNYコメックスの金の通常取引は前日比21.20ドル高の1783.90ドルで終了した。

労働省が発表した11月の雇用統計で、非農業部門雇用者数(NFP)は前月より21万人増加した。57万3000人増を見込んでいた市場予想(ダウ・ジョーンズ)を大きく下回り、昨年12月以降で最も低い伸びとなった。時間当たり平均賃金も前月比0.3%増と伸びは鈍化した。前年同月比では4.8%増となる。一方、11月の失業率は4.2%と10月の4.6%から大幅に低下し、2020年2月以来の低水準となった。さらに労働参加率が10月の61.6%から11月は61.8%に上昇し、労働市場の急速な引き締まりを示唆した。雇用者数は2020年2月のピーク時との比較では、なお390万人下回った状況にある。

雇用統計の発表では、毎回、雇用者数の増加数がまず注目される傾向にある。今回は、米連邦準備理事会(FRB)が、来週12月14~15日の連邦公開市場委員会(FOMC)にて利上げに向けた体制を整えるためテーパリング(量的緩和策の縮小)の加速を決めるとみられることから、注目度は通常より高かった。雇用者増加数が市場予想の半分以下となったことに、まず市場は反応。金価格は跳ね上がり米10年債利回りは急低下となったが、すぐに売り買い交錯状態に移行し、上下動を繰り返し方向が定まらなかった。ただし、その後2時間余り経過した後に、市場の流れが生まれることになった。それは、失業率の急低下や労働参加率などが示す旺盛な求人が(賃金上昇を誘導し)、インフレ高進の持続を示すものと解釈されFRBに金融政策正常化を加速させるとの見方だった。

端的には市場横断的に来週開催される12月のFOMCにて、テーパリングの加速に変更がないことが織り込まれることになった。いわば金には向い風となる環境が予見される中で、この日大きく反発した金だが、この間の下げで金市場では先行してFRBの方針変更が織り込み済みとなっていることがある。むしろその後加わった新型コロナウィルス・オミクロン株感染拡大の経済全般への影響という不透明要因が、リスク回避目的の金需要の高まりを連想させたとみられる。3日は米10年債利回りが1.4%を割り込み一時1.341%まで低下。9月22日以来の低水準となる1.357%で終了し、金市場のサポート要因となった。一方、いつもは長期金利の低下を好感する高PERの成長株群で構成されるナスダック総合株指数だが、この日は2%近く売られ明暗を分けることになった。FRBの金融政策がいよいよ転換点を迎える中で、そこに重なるオミクロン株問題。不透明要因の高まりの中で、ここまで集中的に買われていた値がさ銘柄群を、いったん利益確定する投資家が増えている可能性がありそうだ。
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