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「一時1900ドル割れの金市場でETFの大量買い」

2020/09/23
Market Strategy Institute Inc.代表
金融・貴金属アナリスト
亀井 幸一郎

「一時1900ドル割れの金市場でETFの大量買い」(2020年9月23日記)

日本が連休中の週明け9月21日のNY市場の金価格は、株式市場や為替市場が波乱の展開の中で大幅反落となった。この日の金市場は前週末比51.50ドル安の1910.60ドルで取引を終えたが、終値ベースでは7月24日以来の安値となる。また取引時間中に一時1885.40ドルまで売られたが、これは8月12日以来(1974.20ドル)の安値水準であるとともに、それ以来初の1900ドル割れとなるもの。

この日の金市場の下げは、欧州市場から大きく売られた株式市場の地合いがNY株へと引き継がれ、NYダウ30種平均が一時、前週末比900ドル安まで売られるなど(終値509ドル安)リスクオフ(リスク資産回避)の流れが加速しドルを押し上げたことによる。このところ対ユーロでのドルの強弱をそのまま映し出すドル指数(DXY)に沿ったファンドのAIプログラムによる売買が、金市場の目先の方向性を決めていることがある。ドル指数はこの日約2カ月ぶりの水準となる94ポイントに接近した。

きっかけとなった欧州株の下げは、英国やフランス、スペインなど欧州諸国で第2波を思わせる新型「コロナ感染拡大が見られていること。再び経済封鎖の措置が取られるなど経済の先行き懸念が高まっている。さらに、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)など複数のメディアが20日、欧米複数行が20年近くにわたり違法とされる巨額資金移動(マネーロンダリング)にかかわっていたと報じたことも、地合いを悪化させた。ドイツ銀行などに加え、JPモルガン・チェースやバンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)の米銀も含まれているとされ、市場センチメントを一気に悪化させた。

さらに米国では、新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、政府の対応が後手に回ることを懸念し株価は下げ幅を拡大した。米連邦準備理事会(FRB)高官が「予想以上の戻り(パウエル議長)」と評するほど好調に回復基調をたどってきた経済の先行きに、不透明感が高まっていることによる。7月末までの成立を目指していた新型コロナ支援追加法案が難航を重ね、共和・民主両党の対立は歩み寄ることなく、いまなお成立の目途が立っていない。11月の選挙を控え米議会は9月末に休会に入ることから、市場は「合意なし」を織り込みにかかっている。
双方が主張する予算規模は、5000憶ドル~2兆2000億ドルと大きな開きがあるが、いずれにしても大統領選以降に先送りされることは、当面の米国経済には大きな需要が抜け落ちることを意味する。「財政の崖」と表現されるが、回復に水を掛けることは必至と思われる。先週後半から今週初めの米国株急落は、それを警戒してのものと思われる。その一方で、9月末の四半期末のポジション調整の売りが重なったと思われる。

NY金の下げについても、株価急落の折に見られる金の益出し売り(キャッシュ・アウト)が連想されるが、こちらも四半期末の先物市場でのポジション調整という側面が指摘できる。先週末時点でもNY金の年始からの上昇率は、約29%となっている。

9月21日の金市場でまさに刮目したのは、金ETF(上場投信)の最大銘柄、「SPDR(スパイダー)ゴールド・シェア」の残高が1日で31.83トンと激増したことだった。1日の増加としては今年に入って最大で、2019年6月21日(34.93トン)以来の増加高となる。急落に買い向かったという点で、利益確定の売りが先行した先物市場とは異なった展開は、やはり中長期の視点での資金流入を思わせるものと言える。なお、9月22日のNY金は株式市場が下げ止まりとなる中で、ドル指数はなお高止まり、前日比3ドル安の1907.60ドルで終了となった。
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