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「過熱相場の反動、NY金は7年ぶりの大幅下落」

2020/08/12
Market Strategy Institute Inc.代表
金融・貴金属アナリスト
亀井 幸一郎

「過熱相場の反動、NY金は7年ぶりの大幅下落」(2020年8月12日記)

8月11日のNY市場の金価格は、大幅反落となった。NYコメックスの通常取引は前日比93.40ドル安の1946.30ドルで終了となった。7月22日に終値ベースで節目の1850ドルを突破して以降8月6日の終値ベースでの過去最高値更新(2069.40ドル)まで200ドル余り駆け上がる中で、まったく見られなかった下落局面が、にわかに起きることになった。先週末7日の41.40ドル安の後、週明け10日は取引途中で買い上げられたものの2060.80ドルが戻りいっぱいで反落。11日の取引は、アジア時間は前日終値をやや下回る水準で横ばいで推移。ただし、午後に入り売りが先行する流れが強まり、ロンドンからNY時間に向かってそれは続いた。NYの早朝に2000ドルを割れると下げが加速し、目立った抵抗もなく水準を切り下げながら相場は進行。結局、通常取引終了後の時間外取引時間中も水準を切り下げることになった。

通常取引終了時の下げ率は前日比4.6%で、これは2013年6月20日の6.4%以降で最大のものとなる。当時は、前日発表された米連邦市場委員会(FOMC)の声明文が、量的緩和策の段階的縮小を示唆し、それに反応したものだった。つまり、大きな金融政策の転換を映して売られたものだった。世界的に株式市場も大荒れで、時の米連邦準備理事会(FRB)議長の名前をかぶせバーナンキ・ショックと呼ばれた。

一方、11日の急落に関しては、こうした政策変更など流れの変化を明確に示すものはない。過熱相場の中で自律的に(利益確定売りという)巻き戻し(un-wind)が発生し反落したところに、生まれた流れを加速させることで利益を得ようとするモメンタム系のファンドのAIロボットトレードが集まり、一方通行的な下げをもたらしていると思われる。

この日は、株式市場などでロシアのワクチン開発成功のニュースなどがはやされ、一時株価が上昇。大手投資銀行のレポートなどから、もともとワクチン開発への期待が高まっている米国株式市場は、こうしたニュースに乗りやすい地合いになっているとみられる。そこに、このところ下げが注目されていた米長期金利(10年債)が反発上昇(債券価格下落)し、ドルも買われるということが起きた。メディアでは、こうした流れを金市場の下落の背景としているが、無関係とは言わないものの、やはり過熱相場が一巡した後の崩落というイメージで、やっと訪れた調整局面という捉え方をしている。

ワクチン期待で押し上げられた株価は、引けにかけて急速に上げ幅を削り、主要指数はすべてマイナスで取引を終了した。共和党マコネル上院院内総務が、先週7日に追加策の協議が物別れに終わって以降、話し合いはしていないと発言。前日のムニューシン財務長官の、「週内に決着しそう」という楽観論との温度差の違いを嫌気したもの。また、この日の米長期金利の上昇だが、今週は米国財務省が過去最大規模の国債入札(=国債発行)を予定していることから、需給悪を見込んで売られた結果の利回り上昇とみられる。総額は1120億ドル(約12兆円)にもなる。
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