貴金属市場の動向

2018年11月

株式会社 徳力本店 地金部 地金課 金塚 美智子

  • 金市場の動向
  • プラチナ市場の動向
  • 為替市場の動向

金市場の動向 11月の動き
金価格チャート
ドル建て金相場
 1,215 ドル付近で始まった11 月のドル建て金相場は、前月末に直近安値を付けたことによる安値拾いの買いや外為市場でのドル安進行を受け、買い優勢の展開に。米国長期金利低下も支援材料となり、1,230 ドル台後半まで水準を切り上げました。
 2 日に公表された10 月米雇用統計では、非農業部門就業者数が25 万人増と市場予想を上回り、平均時給は約9 年ぶりの高水準での伸びを記録。また、失業率は約49 年ぶりの低水準を維持するなど、労働市場の底堅さが示されました。この結果を受け、追加利上げが継続されるとの見方が強まる中、金に下押し圧力が掛かり、一時1,230 ドルを割り込む場面が見られました。ただ、その後は米国中間選挙結果待ちとなる中、1,230 ドルを挟んだ付近での小動きが続きました。
 6 日投開票の中間選挙は、上院では共和党が過半数を維持した一方で、下院では民主党が8 年ぶりに過半数を獲得。上下院で「ねじれ」が生じ、トランプ政権運営に先行き不透明感が浮上する中、リスク回避の金買いが進み、一時1,230 ドル台後半まで水準を戻しました。
 しかし、英国の欧州連合(EU)離脱交渉を巡り、11 月中の妥結が困難との悲観的な報道が相次いだほか、イタリア財政先行き不透明感などにより、外為市場では対ユーロでドル高が進行。また、月末からの20 か国・地域(G20)首脳会議に併せて開催の米中会談を前に、貿易問題を巡る調整を始めたとの報を受け、貿易摩擦激化懸念が後退。金売りに転じ、約1 か月ぶりに1,200 ドルの節目を割り込み、1,196 ドル付近まで水準を切り下げる場面が見られました。
 14 日の英国臨時閣議では、欧州連合(EU)離脱協定案を承認したものの、離脱担当相をはじめとする主要閣僚の辞任、メイ首相の不信任投票の要求が出ました。同国政局や離脱交渉への先行き不透明感が強まる中、リスク回避の金買いが優勢となり、1,200 ドルの節目を回復しました。また、16 日には米連邦準備制度理事会(FRB)高官らによる、世界経済減速懸念発言を受け、利上げ打ち止めが早まるとの見方が広がる中、金買いが続き、1,220 ドル台まで水準を切り上げました。その後は、イタリア予算案を巡るEU との対立、英国政局不透明感、アジア太平洋経済協力会議(APEC)での首脳宣言採択見送りによる米中首脳会談への期待感後退を背景に質への逃避買いが進み、1,230 ドル付近まで上伸しました。
 27 日のクラリダFRB 副議長講演では、政策金利が中立水準に近付いているとしながらも緩やかな利上げ継続を示唆したことを受け、下げ足を強め、一時1,210ドル台まで水準を切り下げる場面が見られました。ただ、パウエルFRB 議長講演、11 月FOMC 議事要旨公表、G20 首脳会議など重要イベントを控え、その後は1,220ドル台での小幅な値動きが続き、1,220 ドル付近でこの月の取引を終えました。
今後の見通し
 12 月FOMC での利上げは織り込み済みであるものの、世界経済減速見通しなどを受け、来年以降の利上げ回数が下方修正される可能性が出てきました。今後のFRB 高官らの発言や12 月FOMC 後の見通しで、利上げペースの鈍化が確認できるような内容であれば、相場下支え要因となり、堅調に推移していくと思われます。

プラチナ市場の動向 11月の動き
プラチナ価格チャート
ドル建てプラチナ相場
 840 ドル付近で始まった11 月のドル建てプラチナ相場は、欧米株式の堅調推移や外為市場対ユーロでのドル安進行、金の上昇などを手掛かりにほぼ一本調子で上値を追う展開に。6 月末以来約4 か月ぶりの高値860 ドル台まで1 日で約20 ドル水準を切り上げました。
 2 日に公表された10 月米雇用統計の総じて良好な結果を受け、利上げ継続の見方が広がり、金が売り込まれる中、プラチナも追随したものの、下げ幅は限定的。米国株式の上昇やパラジウムの上昇を眺め、堅調推移が続きました。
 6 日の米中間選挙では、上院:共和党、下院:民主党が勝利し、議会にねじれが生じる結果となりました。ただ、想定内の結果であったこと、共和党が民主党との協力を模索するとのトランプ大統領の発言を受け、米国株式が大きく上昇。プラチナも追随し、一時880 ドル手前まで水準を切り上げました。その後は、直近高値を更新したことによる利益確定の売りや、英国のEU 離脱交渉の妥結遅延懸念、イタリア財政先行き不透明感を受けたドル高進行、金の軟調推移などが相場を圧迫。880 ドル手前から830 ドル台まで40 ドル超大きく水準を切り下げました。
 14 日には、英国臨時閣議でEU 離脱協定案が承認された一方で、主要閣僚の辞任やメイ首相不信任投票の要求などを受け、政局や離脱交渉への先行き不安が浮上。金が買われる中、プラチナも追随し、840 ドル台まで上伸しました。
 その後は、米FRB 高官らによる世界経済減速懸念発言を背景とした利上げ早期打ち止め観測、APEC での首脳宣言採択見送りによる米中首脳会談への期待感後退などを支援材料に一時850 ドル台後半まで上伸しました。ただ、外為市場対ユーロでのドル高進行、欧米株式の下落、原油先物相場の軟調推移を嫌気した売りに840 ドル付近まで水準を切り下げました。
 月末にかけては、プラチナ業界団体:ワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル(WPIC)が公表した2018 年・2019 年需給見通しが、いずれも供給過剰予想となったことで下落基調に拍車を掛けました。840 ドル付近から800 ドルの節目割れを試す付近まで大きく水準を切り下げ、805 ドル付近でこの月の取引を終えました。
今後の見通し
 プラチナ触媒を使用するディーゼル車のシェア低下や中国での宝飾需要減少などが引き続き相場圧迫材料になっています。また、今後の需給見通しにおいても向こう1 年は供給過多が予想されています。ネガティブ要因が多く、独自の相場支援材料に欠けているため、上値重い推移が続くと思われます。



為替市場の動向 11月の動き
ドル円為替チャート
ドル円為替相場
 112.90 円台で始まった11 月のドル円相場は、米国長期金利の低下や低調な米国経済指標を受け、円買いが優勢に。一時112.60 円台まで円高に進みました。
 2 日に公表された10 月米雇用統計の総じて良好な内容に利上げペース加速への思惑が広がる中、米長期金利が上昇。日米金利差の観点から円売りが優勢となり、113 円台に乗せました。その後は、6 日:米中間選挙、7 ~ 8 日:米FOMC などの重要イベントを控える中、113 円台前半での小動きが続きました。
 6 日の中間選挙では、下院で共和党が民主党に敗北したことで、トランプ政権運営への不透明感が広がり、リスク回避の円買いが優勢に。一時113 円を割り込み、112.90 円台まで円高に進みました。ただ、この結果は想定の範囲内だったことに加え、トランプ大統領が民主党との協力を模索する姿勢を見せたことを受け、米国株式が上げ幅を拡大。円に売り圧力が掛かり、113 円台後半まで円安方向に切り返しました。
 8 日のFOMC では政策金利の据え置きが決定し、声明では緩やかな利上げ継続が示されたことで円売りに拍車が掛かり、一時約1 か月ぶりの円安水準となる114 円ちょうど付近を付けました。その後は、新規手掛かり材料に欠ける中、113円台後半~ 114 円ちょうど付近での小動きが続きました。ただ、今月末に開催される20 か国・地域(G20)首脳会議に併せて開催の米中会談を前に貿易問題を巡る事前調整を始めたとの報を受け、米中貿易摩擦激化懸念が後退。114 円台前半まで円が売り込まれました。
 14 日には英国のEU 離脱協定案が承認されたものの、政権幹部の相次ぐ辞任やメイ首相不信任投票要求などが出る中、政局及びEU 離脱を巡る不透明感が再燃。リスク回避の円買いが優勢となり、113 円台前半まで円高に進みました。また、16 日には、米FRB 高官らによる世界経済減速懸念発言を受け、利上げの早期打ち止め観測が浮上する中、円買いが加速。113 円を割り込み、112 円台後半を付けました。
 その後は、世界的な株安やイタリアとEU の対立、英国政局先行き不透明感などを受け、リスク回避の円買いが優勢となる中、一時112 円台前半まで円高に進みました。ただ、株式市場などが持ち直したことやクラリダFRB 副議長の利上げ継続示唆発言などを受け、円売りに転じ、一時114 円付近まで円安に進みました。
 月末にかけては、パウエルFRB 議長講演、FOMC 議事要旨公表、G20 首脳会議など重要イベントを前に様子見ムードが漂い、積極的な商いが控えられました。FRB 議長講演やFOMC 議事要旨は、今後の利上げについてハト派な内容と受け止められる中、やや円高方向に進み、113.60 円台でこの月の取引を終えました。
今後の見通し
 12 月FOMC での利上げは織り込み済みであるものの、直近のFRB 高官らの発言を見る限り、利上げの終着点が議論され始め、2019 年の利上げペースが鈍化する可能性が高くなりました。利上げ打ち止め観測が今後広がるようであれば、円高方向に進むと思われます。ただ、米中貿易問題が先送りされたことやイタリア予算問題、英国EU 離脱問題が解決するともなれば、底堅い推移になると思われます。

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