貴金属市場の動向

2019年2月

株式会社 徳力本店 地金部 地金課 金塚 美智子

  • 金市場の動向
  • プラチナ市場の動向
  • 為替市場の動向

金市場の動向 2月の動き
金価格チャート
ドル建て金相場
 1,320 ドル付近で始まった2 月のドル建て金相場は、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ一時停止観測などを背景に地合いを引き締めました。ただ、1 月米国雇用統計で非農業部門就業者数が市場予想を大きく上回り、労働市場の底堅さが継続していることが確認されたほか、製造業景況指数も良好な結果となり、米国経済の力強さが改めて示されました。これらの結果を受け、金は売り優勢となり、一時1,310 ドル付近まで水準を切り下げました。
 5 日に行われたトランプ米大統領の一般教書演説では、特段目新しい内容は見当たらず、相場への影響は限定的だったものの、政府機関再閉鎖への懸念や世界経済減速懸念などが根強い中では、リスク回避の買いに支えられる場面も見られ、1,310ドル~ 1,315 ドル付近での推移が続きました。
 しかし、米中貿易問題を巡り両国の溝が深いとされている一方で、協議進展への期待感もある中では、外為市場対ユーロでのドル高進行や米国株高などが圧迫材料となり、1,305 ドル付近まで売り込まれました。
 13 日から14 日にかけて公表の米国1 月消費者物価指数や12 月小売売上高の低調な内容に、同国の景気減速懸念が再燃。FRB による利上げ停止の可能性も高まる中、金買いが優勢となり、1,320 ドル台まで上伸しました。その後は、トランプ大統領による、メキシコ国境の壁建設実現にかかる国家非常事態宣言を受けた政情不安などを背景に1,320 ドル台での推移が続きました。
 19 日には米中貿易協議の一環で米国が中国に対し、人民元の安定を要求したとの一部報道を受け、外為市場でドル安が進行する中、金は更に買われる展開に。世界経済減速懸念も支援材料となり、昨年4 月中旬以来約10 か月ぶりの高値圏:1,340 ドル台に乗せ、一時1,350 ドルに迫る付近まで、大きく水準を切り上げました。
 20 日に公表の1 月米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、経済や雇用の状況によっては年内利上げが適切との意見が出るなど、想定よりハト派的な内容ではなかったことが判明。利上げ停止観測が後退したことや直近高値を更新したことによる利益確定の売りに押され、1,330 ドル割れまで20 ドル超大きく水準を切り下げました。その後は、米中通商協議の進捗や米朝首脳会談を見極めたいとの思惑から積極的な商いが控えられ、1,320 ドル~ 1,330 ドル付近での値動きが続きました。
 月末にかけては、インド-パキスタン間の軍事的緊張や米朝首脳会談で非核化が合意に達せず文書への署名が見送られたことを背景にリスク回避の買いが入りました。一方で、米国経済指標の良好な結果や長期金利上昇、外為市場対ユーロでのドル高が圧迫材料となり、金売りが優勢に。1,320 ドル割れまで水準を切り下げ、この月の取引を終えました。
今後の見通し
 米FRB が利上げを急がない姿勢を見せていること、英国のEU 離脱問題、米中貿易摩擦問題、地政学的リスクなどの面から今後も金への資金流入が続き、底堅い推移が続くと考えられます。ただ、米国長期金利の上昇や外為市場でのドル高基調が相場を圧迫する場面も一時的には見られると思われます。

プラチナ市場の動向 2月の動き
プラチナ価格チャート
ドル建てプラチナ相場
 820 ドル付近で始まった2 月のドル建てプラチナ相場は、米国利上げ一時停止観測を背景に堅調推移の続く金に追随し、一時830 ドル台に乗せました。また、プラチナ主要消費国の中国が旧正月(春節)に伴い、市場参加者が少なくなる中でも、米国政府機関再閉鎖への懸念や世界経済減速懸念によるリスク回避の買いに支えられ、820 ドル~ 825 ドル付近での推移が続きました。
 しかし、米中通商協議期限の3 月1 日までに首脳会談実現の公算が低くなり、協議進展への期待感が後退したことに加え、欧州連合(EU)執行機関の欧州委員会では、2019 年・2020 年の圏内成長率見通しを下方修正。これらを背景に欧米株式が急落する中、プラチナは売り優勢になりました。また、プラチナ最大の産出国である南アフリカの国営電力会社:エスコムが巨額の負債を抱えているとの報道もある中、売りが加速し、一時790 ドル割れまで大きく水準を切り下げました。
 14 日以降、米国経済指標の低調な内容を背景に利上げ一時停止の可能性が高まり、金が水準を切り上げる中、プラチナも追随。米国株式の大幅上昇も支援材料となり、800 ドルの節目を回復しました。また、トランプ大統領による国家非常事態宣言に伴う政情不安や米中貿易協議の一環で米国が中国に人民元の安定を要求したとの一部報道を受け、ドル安が進行する中、プラチナ買いが優勢に。800 ドル付近から820 ドル台まで水準を切り上げました。
 その後も姉妹メタルである金やパラジウムが直近高値を更新し、堅調推移が続く中、プラチナも追随。また、南アフリカの鉱山会社のうち少なくとも15 社で働く労働組合員がストライキの構えを示唆。操業停止に伴う一時的な供給減退懸念が支援材料となり、850 ドル台まで大きく水準を切り上げました。
 月末にかけてもこの流れが継続したことに加え、米国-北朝鮮間やインド-パキスタン間の地政学的リスク、米中通商協議の行方など不透明要素が多く燻る中、プラチナ買いが加速。昨年11 月上旬以来の高値:870 ドル台を付け、この月の取引を終えました。
今後の見通し
 南アフリカ鉱山会社のストライキ懸念や電力問題などによる供給減少懸念が支援材料となり、底堅い推移が続いています。一方で、プラチナ触媒を使用するディーゼル車のシェア低下や中国での宝飾需要減少、供給過剰予測などのネガティブ要因が燻っているため、大きく上昇することは見込めないと思われます。



為替市場の動向 2月の動き
ドル円為替チャート
ドル円為替相場
 108.90 円付近で始まった2 月のドル円相場は、1 月米国雇用統計の結果待ちとなる中、同水準でのもみ合いが続きました。米雇用統計では、非農業部門就業者数が市場予想を大きく上回る結果に労働市場の底堅さが改めて示唆される中、円売りが優勢となりました。また、製造業景況指数の市場予想を上回る結果に円売りが加速し、109 円台半ばまで円安に進みました。その後は、トランプ米大統領の一般教書演説などの重要イベントを控え、110 円手前付近での小動きが続きました。
 5 日の一般教書演説では、特段の新しい内容が見当たらなかったほか、欧州・英国の経済先行き不安、米中貿易協議の行方に対する懸念から、欧米株式が急落する中、リスク回避の円買いが進み、109 円台半ば~ 109 円台後半での推移となりました。
 11 日には、春節明けの中国市場で上海株式が大きく上昇し、リスク回避姿勢が後退する中、円売りに転じました。また、米国長期金利上昇を眺めた円売りも入り、昨年12 月下旬以来の円安水準となる110 円台半ばを付けました。その後は、米中貿易協議進展期待に加え、米国政府機関再閉鎖への懸念が後退。米国株式の堅調推移を眺めた円売りが加速し、一時111 円台前半まで円安に進みました。ただ、米国消費関連指標の低調な内容に景気減速懸念が再燃する中、円買いに転じ、110円台前半まで円高方向に切り返しました。
 19 日には、日銀黒田総裁が衆議院財務金融委員会で追加緩和検討の可能性に言及したことを受け、円売りが優勢に。また、20 日に公表の米FOMC 議事要旨では、複数の参加者が年内利上げは適切と主張していたことが明らかになり、利上げ停止観測が後退し、円売りが加速。一時111 円目前まで円安に進みました。その後は、新規手掛かり材料に欠ける中、110 円台後半での小動きが続きました。
 25 日には、トランプ米大統領が米中通商協議について合意が近いことや関税引き上げ期限を延期すると表明。これを受け、米国株式が上昇する中、111 円を抜け、111 円台前半まで円安に進みました。ただ、パウエルFRB 議長の上下院議会証言で目新しい内容が見受けられなかった他、英国のEU 離脱を巡り、依然不透明感が払拭されない中、円買いに転じ、110 円台半ばまで円高に進みました。
 27 日にはインド-パキスタン間の軍事的緊張を背景にリスク回避の円買いが進み、110 円台前半まで円高に進む場面が見られました。一方で、米朝首脳会談への期待感や米国長期金利の上昇を眺めた円売りも入り、111 円付近まで水準を戻す場面も見られました。
 28 日の米朝首脳会談では、非核化に関して合意に達せず、円買いが優勢になるも、米国経済指標の良好な結果を背景とした円売りに111 円台前半まで円安に進みました。年初来の円安水準となる111.40 円台を付け、この月の取引を終えました。
今後の見通し
 米国長期金利上昇などを背景に年初来の円安水準を付けています。ただ、米FRBが利上げを急いでいないことや米中貿易摩擦問題、英国のEU 離脱問題、地政学的リスクなどの不安定要素が燻る中では、一方的な円安基調にはなりにくいと思われます。

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