貴金属市場の動向

2021年4月

田中貴金属工業株式会社 貴金属市場部 トレーディングセクション 鈴木 悠介

  • 金市場の動向
  • プラチナ市場の動向
  • 為替市場の動向

金市場の動向 4月の動き
金価格チャート
ドル建て金相場
 月間最安値の1,715.85ドルでスタートした4月のドル建て金相場は月初、バイデン米大統領が2兆ドル規模のインフラ計画の財源を企業増税で賄うと発表したことや堅調な米雇用統計も相俟って米長期金利が下落しドル安が進むと1,740ドル近辺まで値を伸ばした。その後発表された米新規失業保険申請件数では、市場予想に反し悪化したことや米国内における新型コロナウイルス新規感染者数の増加を材料に選好されると1,760ドル近辺まで続伸する展開となった。その後、米長期金利が反発したことを嫌気した売りから1,730ドル近辺まで値を下げる場面も見られた。月半ばにかけて、米経済指標が強い結果を示し景気回復が裏付けされたものの、これまで急速に上昇した米長期金利利回りに対する調整から再び下落に転じると、金への資金流入が加速し21日には月間最高値の1,798.20ドルまで上昇した。月末にかけて1,800ドルを前に利食い売りが強まったことに加え、米FOMCを前に調整売りが入り1,780ドル近辺まで値を下げると、同会合では市場予想通り政策金利は据え置かれ、資産買い入れ額を維持としたことで金融緩和の長期化が意識されると米長期金利は上昇しドル高となると、月末30日には1,767.65ドルまで下落して終了した。
今後の見通し
 米長期金利上昇によって引き起こされた約2年ぶりのドル高への転換が足元落ち着きを見せたことで、金相場の軟化もやや足踏みしている。しかしながら、新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、感染者数の抑制・減少後には行動制限解除が待っていることから米国は経済活動の正常化への道を着実に進んでいるようにも見え、短期的には金相場は軟調な展開も想定すべきだろうが、米国の雇用情勢は未だ回復途上で現行の低金利政策からの脱却(=利上げ)は容易ではないと言わざるを得ず、はっきりとしたドル高局面(ゴールド売り)にあるのかは疑わしい。これまで以上に実体経済を注視してく必要があるだろう。

プラチナ市場の動向 4月の動き
プラチナ価格チャート
ドル建てプラチナ相場
 1,189ドルでスタートした4月のドル建てプラチナ相場は月初、力強い米製造業景況指数や米雇用統計を材料に値を伸ばすと、米長期金利低下を受けたドル安も相俟って1,240ドル近辺まで続伸した。その後は、利食い売りが旺盛になり下落に転じると、米長期金利が上昇に転じたことや新型コロナウイルスの世界的な再拡大が景気回復の停滞を想起させたことで13日には月間最安値の1,167ドルまで続落した。この水準では安値を拾う動きが強まり、米3月小売売上高や米新規失業保険申請件数が米経済の回復を示したことで、米株価が最高値を更新したことなどを材料に買いが旺盛となると23日には月間最高値の1,244ドルまで回復した。しかし、同水準では上値は抑えられ、米長期金利の上昇に伴うドル高から値を下げると、月末30日には1,218ドルまで下落して終了した。
今後の見通し
 環境保全分野への期待感からETFを中心に資金流入が続き、投資資金の流入が価格を押し上げる展開となっており、短期的には下値の堅い展開が継続すると予想する。欧州の経済活動再開に期待感が高まる中、3月に入り欧州の新車販売台数が急回復し、2019年以来の数字を記録しているが、これら実需の回復が継続したものとなり得るのかが今後の鍵になるのではないかと予想している。



為替市場の動向 4月の動き
ドル円為替チャート
ドル円為替相場
 月間最高値の110.84円でスタートした4月の為替相場は月を通して上値の重い展開となった。月初、米新規失業保険申請件数の悪化を材料にドル安が進むと、米3雇用統計は良好な結果を残したものの、金融当局者が辛抱強く金融緩和を続ける必要があると発言したことで、市場の早期利上げへの期待感が後退し109円近辺までドル売りが強まる展開となった。その後発表された、米3月消費者物価指数も強い結果を残したものの、これまで急速に上昇していた米長期金利利回りが一服し下落に転じていることでドル安に歯止めがかからず108.50円近辺まで続落した。その後は、EU圏内での新型コロナウイルスワクチンの配布拡大見通しが強まったことで、対ユーロやポンドでドルが売られると、ドル円にも波及し108円近辺まで下落した。同水準ではサポートされる場面が続いたものの、バイデン大統領が富裕層に対する増税を提案する見通しを示したことで108円を割り込むと、26日には月間最安値の107.89円までドル安が進行した。その後開催された米FOMCでは市場予想通り政策金利は据え置かれ、資産買い入れ額の維持が発表される中、米長期金利上昇を眺めドル買いが強まると、一時109近辺まで急騰した。しかし、その後のFRB議長の発言を受け、金融緩和の長期化が改めて意識されるとドル売りに転じ108.50円まで値を下げた。その後ドル買い戻しの動きが強まると、月末30日には108.93円まで回復して終了した。
今後の見通し
 新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、感染者数の抑制・減少後には行動制限の解除も待っていることから、米国は経済活動の正常化への道を順調に進んでいるように見える。金融政策の正常化に進めるだけの素地が整えば、ドル独歩高の可能性も視野にいれておくべきであろう。

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