貴金属市場の動向

2020年7月

田中貴金属工業株式会社 貴金属市場部 トレーディングセクション 鈴木 悠介

  • 金市場の動向
  • プラチナ市場の動向
  • 為替市場の動向

金市場の動向 7月の動き
金価格チャート
ドル建て金相場
 1,787.40 ドルでスタートした7 月のドル建て金相場は、米6 月ISM 製造業景況指数が高水準となったことや、新型コロナウイルス感染症のワクチン開発に期待感が高まったことを受け、同日ロンドン時間午後には月間最安値の1,771.50 ドルまで下落した。その後は、世界経済の回復速度に対する懸念から米株式市場が下落したことで1,800 ドルを突破すると、月半ばまで同値近辺で揉み合う展開が続いた。月末にかけては、EU 首脳会議での復興基金合意に対する期待感の高まりから対ユーロでドルが弱含み下値を切り上げると1,850 ドル近辺まで上昇した。その後も、米中総領事館閉鎖を巡る両国の緊張感の高まりや、米FOMC にて強力な金融緩和や政府による財政政策の重要性が強調されたことから主要通貨に対しドルが弱含み1,950 ドル近辺まで続伸した。月末には、米4 -6 月期四半期実質国内総生産(GDP)速報値が過去最悪のマイナス成長を示したことに加え、新規失業保険申請件数が増加したことで更に上昇すると、31 日のロンドン時間午前には月間最高値の1,974.70 ドルまで値を伸ばした。その後は利食い売りなどから下落し、同日午後には1,964.90 ドルで終了した。
今後の見通し
 新型コロナウイルス感染拡大を背景に、主要各国が大規模な金融緩和政策を打ち出す中で資金流入が続き、史上最高値を更新している。引き続きこの流れを維持すると予想する一方で、株式市場が急落する可能性も孕んでおり、損失補てんの換金売りによる下落も視野に入れておきたい。

プラチナ市場の動向 7月の動き
プラチナ価格チャート
ドル建てプラチナ相場
 825 ドルでスタートした7 月のプラチナ相場は月初、良好な米経済指標が発表される一方で、米国内における新型コロナウイルス新規感染者数が大幅に増加したことを受け、景気回復に対する期待感の剥落から3 日には月間最安値の808 ドルまで下落した。その後は、米株式市場の上昇などを材料に徐々に下値を切り上げ860 ドル近辺まで上昇するも、この価格水準では利食い売りが旺盛となり820ドル近辺まで急落した。月半ばには、新規材料に乏しく動意に欠ける展開となると820 ドル近辺から850 ドル近辺のレンジ相場を形成した。月末にかけては、難航していたEU 首脳会議での復興基金案が合意され、対ユーロでドル安が進み880ドル近辺まで急騰すると、新型コロナウイルスワクチンの開発に対する楽観も広がったことで920 ドル近辺まで続伸した。その後は、米中関係の悪化や利食い売りから900 ドル近辺まで値を下げる場面もみられたが、米FOMC を前に引き続き金融緩和政策を維持するであろう見方が強まりドルが弱含むと、29 日には月間最高値の945 ドルまで上昇した。月末には、新型コロナウイルスの第2 波への警戒感から産業用メタルとしての側面が意識され、31 日には905 ドルまで下落して終了した。
今後の見通し
 世界的な金融緩和から資金流入しやすい状況が続いているものの、コロナ禍における経済活動の縮小は産業用メタルの側面を持つプラチナにとっては重しとなり、金相場に追随し上昇する局面もみられるであろうが、上値は限定的となるであろう。



為替市場の動向 7月の動き
ドル円為替チャート
ドル円為替相場
 月間最高値の108.12 円でスタートした7 月の為替相場は月初、本邦株式市場の下落を受け徐々に上値を削り107.50 円近辺まで値を下げたあとは、米国内における新型コロナウイルス新規感染者数の増加や良好な米経済指標を材料に売り買いが交錯する展開が続き同値近辺で推移した。その後は、新型コロナウイルス感染症の治療薬で前向きな治験結果が示されると米株式市場が上昇し、リスク選好志向が強まったことでドル全面安となると106.80 円近辺まで下落した。月半ばにかけては、強弱入り混じる米経済指標や米中関係悪化懸念を背景に売り買いが交錯し107 円近辺で動意に欠ける展開となった。月末にかけて、E U 首脳会議で復興基金案が合意されると、欧州での景気回復に対する期待感から対ユーロでドルが売られ、これがドル円にも波及し106 円近辺まで急速に下げ幅を拡大した。その後も、米新規失業保険申請件数の増加や米中総領事館閉鎖を巡る米中関係の悪化に加え、米FOMC では経済の先行きが極めて不透明との認識から金融緩和政策の長期化が打ち出されたことを受け105 円を割り込む水準までドル売りが加速した。月末には、米4- 6 月期四半期実質国内総生産(GDP)速報値が過去最悪のマイナス成長となったことで続落すると、31 日には月間最安値の104.60 円まで下落して終了した。
今後の見通し
 金融緩和によりドル流通量が増加している中で主要通貨に対するドル売りが強まっている。一方で、米国内における新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めが掛かっておらず、再び米株式市場が暴落すればドル資金確保の動きから値を戻す局面もあるであろう。

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