貴金属市場の動向

2021年5月

株式会社 徳力本店 地金部 地金課 金塚 美智子

  • 金市場の動向
  • プラチナ市場の動向
  • 為替市場の動向

金市場の動向 5月の動き
金価格チャート
ドル建て金相場
 1,770ドル台で始まった5月ドル建て金相場は、長期金利の指標となる米10年債金利の低下や外為市場対ユーロでのドル安を眺めた金買いが入り、1,800ドルを試す付近まで上伸しました。
 ただ、米イエレン財務長官が成長戦略をめぐり「極めて緩慢な金利上昇につながる可能性がある」と示唆。金利先高感が浮上し、1,770ドル割れまで大きく売り込まれました。その後は、長期金利の低下やドル安基調が続く中、金買いに転じ、2月中旬以来約3か月ぶりに1,800ドルの節目を突破しました。
 7日に公表の4月米雇用統計では、景気動向を敏感に反映するとされる非農業部門就業者数が市場予想を大きく下回る26.6万人増に留まり、失業率も前月から悪化。雇用情勢の回復が鈍化する中、リスク回避の金買いが進みました。一時1,840ドル台まで水準を切り上げ、その後は1,840ドルを挟んだ付近での推移が続きました。
 12日に公表の4月米消費者物価指数(CPI)が前年同月比4.2%上昇と大幅な伸びを記録し、インフレヘッジ目的の金買いが先行。1,845ドル付近まで上伸するも、米長期金利上昇とドル高に押され、1,820ドル割れを試す付近まで水準を切り下げました。
 その後は、長期金利低下とドル安を眺めた展開が続いたほか、欧州の経済活動正常化への期待感や米国の物価上昇懸念が強まる中、インフレヘッジ先としての金買いが優勢に。18日には一時1,870ドル台まで水準を切り上げ、1月中旬以来約4か月ぶりの高値圏へ浮上し、4月米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨公表待ちとなる中、同水準での推移が続きました。
 注目のFOMC議事要旨では、複数の参加者が「今後の会合で量的緩和縮小の議論開始が適切」と示唆していることが明らかとなり、金売りが優勢となる場面が見られました。ただ、米長期金利低下やドル安が相場支援材料となっているほか、インフレ懸念が燻り続けている中では、金買いに転じ、1,890ドル付近まで水準を切り上げました。
 21日には、米5月製造業景況指数速報値の強い内容を受けたドル高と米国株高を嫌気した金売りに押され、一時1,870ドル台まで水準を切り下げる場面が見られました。ただ、米長期金利低下が続く中では金買いも入りやすく、再び1,890ドル台まで水準を戻しました。
 また、25日に公表された主要米国経済指標の低調な結果や米連邦準備制度理事会(FRB)の複数高官らによる金融緩和長期化を示唆する発言も追い風となる中、1月上旬以来となる1,900ドルの節目を回復。一時1,913ドル付近まで上伸しました。
 月末にかけては、米週間失業保険申請件数が新型コロナ感染拡大以降の最低水準を4週連続で更新し、雇用情勢改善が見られることによる景気回復への期待感を背景とした金売りや直近高値を更新したことによる利益確定の売りが優勢に。一時1,900ドルを割り込み、1,890ドル付近まで水準を切り下げたものの、その後やや水準を戻し、1,899ドル付近でこの月の取引を終えました。
今後の見通し
 欧米の景気回復への期待感、長期金利の高止まりや米国株高などが金相場下押し要因となる一方で、将来的なインフレヘッジ先としての金買いが入りやすい環境が続いています。暫くは、底堅い値動きが続くと思われます。

プラチナ市場の動向 5月の動き
プラチナ価格チャート
ドル建てプラチナ相場
 1,200ドル付近で始まった5月ドル建てプラチナ相場は、長期金利の低下やドル安を受け上昇に転じた金に追随し、1,240ドル付近まで水準を切り上げました。また、ロシア鉱山の浸水事故による生産減少などを背景とした供給懸念から史上最高値を更新したパラジウムにも連れ、一時1,260ドルを試す付近まで上伸しました。ただ、直近高値更新後は、売りに押され、1,220ドル付近まで水準を切り下げました。
 7日に公表の4月米雇用統計は、非農業部門就業者数・失業率共に市場予想を下回る結果となったことを受け、金が1,840ドル台まで急伸する中、プラチナも追随。1,260ドル台まで大きく水準を切り上げました。その後は、高値警戒感からハイテク株を中心に利益確定の売りが入り、大幅安となった米国株式やパラジウムの急落を嫌気した売りが優勢に。1,260ドル付近から一時1,200ドル割れを試す付近まで大きく水準を切り下げました。
 12日に公表の米消費関連指標の良好な結果を受け、米国株式が大幅反発したことや金の上昇を眺め、プラチナ買いに転じました。また、ドル安やパラジウムの堅調推移も相場支援材料となる中、1,250ドル台まで水準を戻しました。
 ただ、直近高値更新による利益確定の売りが優勢となる中、1,200ドルの節目を割り込み、1,190ドル付近まで大きく水準を切り下げました。
 その後は、プラチナ独自の手掛かり材料に乏しい中、1,190ドル~1,210ドル付近での小動きが続いたものの、パラジウムの大幅安に追随し、再び売りが優勢に。一時1,170ドル割れまで水準を切り下げ、1,170ドル~1,180ドル付近で上値重い推移が続きました。
 25日に公表された主要米国経済指標の低調な結果や米FRB高官の融緩和長期化を示唆する発言を受け、金が4か月ぶりの高値圏まで上昇する中、プラチナも追随。また、米国株式やパラジウムの上昇にも支えられ、1,210ドル台まで水準を切り上げました。
 月末にかけては、米雇用情勢改善による景気回復への期待感などを受け、金が売りに転じたほか、パラジウムの大幅安などが相場を圧迫。1,200ドルを割り込み、1,170ドル付近まで水準を切り下げました。その後は、1,170ドル~1,180ドル付近での小動きが続き、この月の取引を終えました。
今後の見通し
 需給面で供給不足の見通しや世界的な環境規制の強化を背景とした中・長期的な需要増加見通しなどに支えられ、底堅い値動きが続くと思われます。



為替市場の動向 5月の動き
ドル円為替チャート
ドル円為替相場
 5月ドル円相場は、日本がゴールデンウィークとなった3日から5日にかけては特段の新規手掛かり材料に乏しく、109円ちょうど付近から109.50円付近での推移が続きました。
 7日に公表の4月米雇用統計では、 非農業部門就業者数と失業率が市場予想を下回る結果となったことを受け、米長期金利が低下し、為替は対主要通貨でドルが全面安に。109円を割り込み、一時108.30円台まで円高に進みました。その後は、米国株式の堅調推移を眺めた円売りが入り、109円を試す付近まで水準を戻し、108円台後半での推移が続きました。
 12日に公表の米消費者物価指数(CPI)が前年同期比で大幅に上昇したことを受け、長期金利や米国株式が上昇する中、円売りが加速。109円の節目を抜け、一時109.80円台まで円安に進みました。その後は、急速に進んだ円売りに対する反動買いが入り、109.30円台まで水準を戻し、同水準での推移が続きました。
 ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)クラリダ副議長が米国経済の正常化について時間を要する可能性を示唆したことを受け、円買いが加速。米長期金利低下や米国株安などを眺めた円買いも入る中、109円を割り込み、108.50円台まで円高に進みました。
 19日に公表された4月米FOMC議事要旨では、量的緩和縮小の議論開始を今後の会合で求める参加者が複数見受けられ、円売りに転じ、109.20円付近まで急速に円安方向に切り返しました。その後は、新規手掛かり材料に欠け、長期金利や米国株式の動きに左右される展開となる中、108円台後半まで円高に進み、同水準での推移が続きました。
 27日に公表の米雇用関連指標の改善を受け、長期金利が上昇する中、円売りが優勢に。109円の節目を回復し、109.30円付近まで円安に進みました。また、28日に公表の4月の米個人消費支出(PCE)物価コア指数が前年同月比で上昇し、13年ぶりの高い伸び率を記録したことも円売り要因となり、一時4月上旬以来の円安水準となる110円台に乗せました。
 月末にかけては、英国と米国の休場に伴い市場参加者が少なくなる中、110円を割り込み、109円台後半での小動きが続き、109.70円台でこの月の取引を終えました。
今後の見通し
 新型コロナ向けワクチン接種の進む欧米の景気回復への期待感を背景とした株式や金利の動きに連動している状況が続いているほか、日米金利差拡大を意識した値動きが続くと思われます。

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