貴金属市場の動向

2024年3月

石福金属興業株式会社 管理部資材グループ 北川 拓

  • 金市場の動向
  • プラチナ市場の動向
  • 為替市場の動向

金市場の動向 3月の動き
金価格チャート
ドル建て金相場
 月間最安値の2049.80ドルでスタートしたロンドン金相場は、1日に米サプライ協会(ISM)から発表された2月米製造業購買担当者景況指数(PMI)の結果が市場予測を下回り、早期の米利下げが意識され4日に史上最高値の2083.15ドルを付けた。翌5日には節目の2100ドル台を超え、6日にパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が公聴会にて利下げに言及しドルと長期金利が下落すると割安感から旺盛な買いが継続し、7日には2150ドル台を突破。8日に発表された2月米雇用統計で失業率の悪化が示されると更に騰勢を強め、11日には2180.45ドルまで上値を伸ばし、連日の史上最高値更新となった。
 その後、12日に発表された2月米消費者物価指数(CPI)が市場の予測を上回ると、米利下げ期待の後退と高値継続の反動から下落に転じ、2160ドル台まで値を下げた。14日の2月米卸売物価指数(PPI)でもインフレの持続が示されると、米利下げ期待は更に減速。米長期金利とドルの上昇から18日には2150ドル台まで下落した。
 19、20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では前週に堅調なインフレ関連指標の発表が相次ぐも政策金利の据え置きが決定し、年内3回の利下げ見通しも維持された。FRBは利下げに対し積極姿勢であるとの見方が広がり、ドルが売られ割安感が買いを誘うと21日には2210ドル台まで上昇した。その後、高値警戒感や利益確定の売りに一時2160ドル台まで圧迫される場面もあったものの、25日に発表された2月米新築一戸建て住宅販売戸数が市場の予測を下回ると、米経済の減速と捉えられ翌26日に2190ドル台を回復した。2月米個人消費支出(PCE)物価指数の発表を29日に控え同値付近でもみ合う中、買いが膨らみ、28日には月間最高値である2214.35ドルをつけ、再度史上最高値を更新しこの月の取引を終えた。
今後の見通し
 米経済指標と主要通貨に対するドルの動きに左右されながら、米利下げ見通しの維持、各国中銀の買い、中東、ロシア・ウクライナ情勢を中心とした地政学リスク等を支援材料に概ね堅調に推移するものと考えられます。

プラチナ市場の動向 3月の動き
プラチナ価格チャート
ドル建てプラチナ相場
 月間最安値の872ドルでスタートしたロンドンプラチナ相場は、金の大幅上昇に連れて値を上げ4日に890ドル台付近まで上昇した。6日にパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が公聴会において年内の利下げに言及すると早期の利下げ期待を背景としたドルの下落が買いを誘い7日に920ドル付近まで上伸し、史上最高値ペースで推移する金への追随もあり11日には930ドル台まで値を上げた。以降は月半ばにかけて930ドルを挟み推移する中、同じ白金族であるパラジウムの3営業日続伸に連れ15日に月間最高値の945ドルまで上伸した。
 その後、18日に日銀金融政策決定会合でのマイナス金利解除決定を受けたドルの上昇を背景にプラチナは売り込まれ、920ドル台まで下落すると翌19日には節目の900ドルを割り込んだ。この水準では安値拾いの買いが入る中、20日に米政府は2027年から適用される排ガス規制案の緩和を発表した。従来案の規制ではメーカーがEV(電気自動車)の販売割合を増やす程、排出基準を達成しやすくなる内容であったものの今回の緩和によって急激なEVシフトの後退と内燃機関車の存続が想起され、自動車触媒としてのプラチナの需要が意識されると910ドル台を回復した。
 以降はドルと米長期金利の変動に左右されながら月末にかけ同値近辺で推移する中、29日の2月米個人消費支出(PCE)の発表を前にしたポジション調整の売りに押され27日に再び900ドルを割り込むも、翌28日にはドルの下落を受けた買いに支えられ907ドルまで上昇しこの月の取引を終えた。
今後の見通し
 需要面の伸びは勢いを欠くも白金族の相場下落を背景に最大産出国である南アフリカ共和国の鉱山では合理化の動きが見られます。供給の減少が考えられる一方で、米国排ガス規制の見直し等急激なEVシフトのトレンドの一服感もある事から下値は堅く推移するものと思われます。



為替市場の動向 3月の動き
ドル円為替チャート
ドル円為替相場
 150.31円でスタートした3月のドル円相場は、1日に米サプライ協会(ISM)が発表した2月米製造業購買担当者景況指数(PMI)の結果が低調であった事で米利下げが想起され4日に150.08円まで下落すると、6日のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)の米利下げへの言及、8日に発表された2月米雇用統計での失業率の悪化を受け、米利下げ観測が拡大しドル売りが進むと11日には月間最安値の146.82円まで下落した。
 しかし、12日に発表された2月米消費者物価指数(CPI)が市場の予想を上回る結果となると米利下げ観測は後退し13日に147円台を回復し14日に発表された米卸売物価指数(PPI)もCPIに続き堅調な結果を示すと15日には148.59円まで上昇した。
 18、19日に開催された日銀金融政策会合ではマイナス金利の解除が決定し、19、20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利が据え置かれ、利下げ見通しも3回で維持された。FOMCは比較的ハト派的な結果であったものの、市場では日銀が当面緩和的な姿勢を継続するとの見方が強く、ドル買い円売りが進行。18日に150円台を突破し21日にはスイス中銀による想定外の利下げが実施されると、対主要通貨でドルが買われ22日には月間最高値の151.59円まで上昇した。その後は151.40円付近で推移し、堅調な米経済指標を受け27日には再び151.57円まで上昇するも、その後は大きな動きは無く151.41円でこの月の取引を終えた。
今後の見通し
 日銀はマイナス金利政策解除を決定したものの市場からはハト派的に受け止められた事に加え、直近の米経済指標は堅調で米利下げ時期に不透明感が出ている事もあり概ね円安基調で推移するものと考えられます。

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