貴金属市場の動向

2023年2月

株式会社徳力本店 地金部 地金課 門脇 敬太

  • 金市場の動向
  • プラチナ市場の動向
  • 為替市場の動向

金市場の動向 2月の動き
金価格チャート
ドル建て金相場
 1,930ドル付近で始まった2月ドル建て金相場は、1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)にて、大方の市場予想通りとなる0.25%の利上げが決定された中、当初は動きが限られました。しかし、その後の会見でパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、あと2回の利上げを示唆した一方でインフレ鈍化について言及したこと受け、過度な金融引き締め期待が弱まりドルが売られたため、1,950ドル台前半まで上昇しました。
 2日には欧州中央銀行(ECB)や英イングランド銀行(BOE)の金融政策発表を控える中、1,960ドル近辺まで上昇しました。いずれも0.50%の大幅利上げを決定したものの、市場予想通りであったことや、同日公表の米新規失業保険申請件数が良好な結果となり、ドルが買われたため売りに転じました。また、3日に公表の1月米雇用統計は市場予想を大幅に上回った他、1月米ISMサービス業購買担当者景況指数(PMI)も堅調だったため、ドルと米長期金利が上昇。1,900ドルの節目を割り込み、1,860ドル付近まで大きく売られました。
 その後は、急落の反動で下げ止まりが見られたものの、米アトランタ連銀総裁が、今後の利上げ幅の再拡大に言及し、利上げの到達点が従来予想よりも高くなる可能性を示唆。パウエルFRB議長も、金利が予想以上に上昇する可能性があると発言しました。金融引き締めの長期化が意識され、米長期金利とドルが高止まりする中で上値が抑えられ、10日には1,850ドル台前半まで下落しました。
 14日に公表の1月米消費者物価指数(CPI)はほぼ市場予想通りだったものの、前年比では予想を上回りました。インフレ低下のペースが予想ほど早くないことから、FRB高官らは金融引き締めの長期化やより積極的な利上げの可能性に言及したことを受け、ドル買いが進み、売り優勢の展開が続きました。また、その後発表された1月米小売売上高や1月米生産者物価指数(PPI)も予想を上回り、ドル高と米長期金利の上昇がさらに進んだことから17日には1,820ドル付近まで下落しました
 22日公表の1月米FOMC議事録要旨では、参加者の大半が利上げ幅縮小に同意したものの利上げの継続は支持し、数人は0.5%の大幅利上げを主張していたことが判明。米利上げ長期化の見方がより強まり米長期金利とドルが高止まりする中、売りが売りを呼ぶ流れになりました。その後も、1月米コア個人消費支出(PCE)価格指数が市場予想や前月の結果を上回るなど、インフレの高止まりを示す経済指標が続き、27日には月間安値となる1,805ドル付近まで下落し、昨年12月以来の安値を更新しました。
 月末には、1月米耐久財受注や2月米消費者信頼感指数が市場予想を下回り、ドル高が一服。1,830ドル付近まで値を戻し、この月の取引を終えました。
今後の見通し
 2月は強い米経済指標が相次いだことで、市場では米利上げの長期化、利上げの到達点の上振れの織り込みが進み、大幅下落となりました。一部米FRB当局者らは、最近の強い指標が一時的なものかどうかを見極める必要があるとの認識を示しており、今後発表される米主要経済指標への注目が一段と高まります。結果次第で上下どちらにも反応する相場展開となると思われます。

プラチナ市場の動向 2月の動き
プラチナ価格チャート
ドル建てプラチナ相場
 1,010ドル付近で始まった2月ドル建てプラチナ相場は、1日の米FOMCとパウエルFRB議長会見後も同水準で推移。米FOMC後はドル安となったことから1,035ドル付近まで買われたものの、再度ドル高となると上げ幅を削りました。3日の1月米雇用統計後は、金安・ドル高となる中で1,000ドルの節目を割り込み、昨年12月以来となる975ドル付近まで下落しました。
 その後も米労働市場の過熱やインフレへ対応するべく、FRB高官らが利上げに前向きな姿勢を相次いで示したことから、金融引き締めの長期化が嫌気され、弱い展開となりました。また、同族メタルのパラジウムが2019年以来の安値水準まで下落したことや、米インフレ、消費関連指標が市場予想を上回ったことで、一段とドル高と米長期金利高が進んだことが下押し圧力となり、16日には昨年11月以来の安値となる910ドル付近まで下落しました。
 21日公表の欧米1月総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は市場予想を上回る結果となり、 欧米の景気後退懸念がやや和らいだことで、22日には960ドルまで反発しました。
 しかし、23日公表の米第4四半期GDP改定値が下方修正された他、インフレ、労働市場の過熱を示唆する米経済指標が相次ぎ、27日は月間安値の900ドルに迫る付近まで売られ、昨年10月以来の安値を更新しました。また、ドル高が進み、パラジウムが約4年ぶりの安値を更新したことも圧迫材料となりました。
 月末には、米消費財や米個人消費関連指標が予想を下回ったことでドル高が一服。950ドル付近まで戻して、この月の取引を終えました。
今後の見通し
 米利上げの長期化が景気を冷やす可能性があり、上値は限定的と思われます。一方、生産の8割を占める南アフリカでの深刻な電力危機は継続しており、供給面の不安の高まりが価格上昇に繋がるリスクには注意が必要と思われます。



為替市場の動向 2月の動き
ドル円為替チャート
ドル円為替相場
 130円丁度近辺で始まった1月ドル円相場は、1日の米FOMC後、FRBが金融引き締めのペースを緩めるとの見方が高まり、128円半ばまで円高に進みました。しかし、3日公表の1月米雇用統計は予想を大幅に上回り、他の米経済指標も良好な結果が示したことで一転してFRBの金融引き締め長期化の期待が強まり、131円台前半まで大幅に円安に進みました。
 米雇用統計の余波が続く中、政府が黒田日銀総裁の下で金融緩和政策に携わった雨宮副総裁に新総裁就任を打診したという報道を受け、6日には132.90円付近まで円が売られました。その後も日銀の新総裁の人事を巡る報道で突発的な変動が頻発し、10日には有力視されていた雨宮副総裁ではなく、元日銀審議委員の植田氏を起用と伝わると、131円台半ばから129円台後半まで急速に円高に進みました。ただ、植田氏が現行の金融政策を支持する発言を行ったことや、この日公表の米ミシガン大学の2月消費者信頼感指数(速報値)が13か月ぶりの高水準になった他、将来の期待インフレ率も予想を上回ったことで米長期金利が上昇。再び円売りの流れとなり、131円台前半まで値を戻しました。
 14日公表の1月米CPI後は、米利上げ長期化の見方が一段と強まりました。他の米小売、インフレ関連指標も予想を上回り、17日には米長期金利が昨年11月以来となる3.92%台まで上昇する中、17日には2か月ぶりの水準となる135円台前半まで円安に進みました。
 その後も米利上げ長期化の正当性を裏付ける強い米経済指標が続いたことや、日銀次期総裁候補の植田氏が「金融緩和の継続が適切」と発言したことを受け、24日には昨年12月以来の水準となる136円台後半まで円安に進みました。
 28日には米長期金利が3.98%台まで上昇する中、136.90円付近を付け月間の円安水準を更新する場面もありました。ただ、月末公表の米経済指標は市場予想を下回るものが多く、やや円が買い戻され136.20円付近でこの月の取引を終えました。
今後の見通し
 米FRBが利上げの長期化に傾いた一方、次の日銀総裁候補の植田氏は、現在の日銀の金融緩和政策を適切との考えを表明しており、日米の金融政策の違いから円安傾向が続くと思われます。ただ、米FRB内では今後の経済指標を見極める必要があるとの意見もあり、経済指標次第では円高方向に進むことへの警戒も必要です。

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