貴金属市場の動向

2023年10月

田中貴金属工業株式会社 貴金属市場部 トレーディングセクション 鈴木 悠介

  • 金市場の動向
  • プラチナ市場の動向
  • 為替市場の動向

金市場の動向 10月の動き
金価格チャート
ドル建て金相場
 1,831.85 ドルでスタートした10 月のドル建て金相場は月初、米政府機関の閉鎖が回避されたことや、米9月ISM 製造業景況指数などが市場予想を上回る結果だったことで軟調な展開となると、4 日には月間最安値の1,818.95 ドルまで下落した。その後発表された米9 月雇用統計では、雇用者数は強い内容だったものの、賃金の伸びが鈍化したことでドルが弱含み1,850 ドル近辺まで反発した。月半ばから後半にかけては、中東情勢が緊迫化し地政学的リスクが台頭したことで選好されると、急速に下値を切り上げ1,970 ドル近辺まで上昇した。月末にかけては、米FRB 議長の講演内容などを材料に米利上げ観測が強まった一方、中東情勢の緊迫化が継続したことで1,980 ドル近辺で揉み合いが続いた。しかし月末には、同地域の緊張感が更に高まったことで買い進められ、30 日と31 日には月間最高値の1,997.60 まで上昇した。節目の2,000 ドルを前にやや上値が重くなると、31 日ロンドン時間午後には1,996.90 ドルで終了した。
今後の見通し
 米国の金融政策はある程度の効果を示しつつあり、市場では追加利上げに対する警戒感が薄れつつある。しかし、米FRB は追加利上げを否定せず、利上げ余地を残していることから、ドル高地合いは継続するものと思われる。金相場はそれらにより上値を抑えられる展開となろうが、ひとたびそれらの楔が外れれば、地政学的な状況も含め上昇を妨げる要因は少ない。当面は米国の金融政策動向に左右され方向感なく上下する展開となろうが、上方向への警戒感は拭えない。

プラチナ市場の動向 10月の動き
プラチナ価格チャート
ドル建てプラチナ相場
 906 ドルでスタートした10 月のプラチナ相場は月初、米政府機関の閉鎖回避によるドル高や米FRB 高官の発言を受けた金融引き締め長期化観測を材料に急速に下げ幅を拡大すると、6 日には月間最安値の858 ドルまで下落した。その後は安値を拾う動きや、米雇用統計の結果を受けたドル安から一時900 ドル近辺まで反発したものの、米9 月消費者物価指数を受けた金融引き締め長期化観測を嫌気した売りから870 ドル近辺まで下落した。その後も900 ドルを挟み売り買いが交錯する展開が続いたものの、米株価が反発したことや中東情勢の悪化を背景に上昇する金相場を眺め節目の900 ドルを突破すると、月末31 日には月間最高値の940 ドルまで回復して終了した。
今後の見通し
 足もとでは900 ドル割れでの需要を確認することとなり、下値はかなり強く固まりつつある。勿論、1,000ドルという大台には相応の利益確定の動きもでるものと思われるが、産業用需要は底堅く推移しており、相場の下値固めを後押ししている状況にある。中期的に需給感も変化しつつある状況下、基本的には上昇を意識した展開が続くこととなろう。



為替市場の動向 10月の動き
ドル円為替チャート
ドル円為替相場
 149.79 円でスタートした10 月の為替相場は月初、節目の150 円を前に円を買い戻す動きが強まると、米9 月雇用統計で賃金の伸びが鈍化したことなども相俟って、10 日には月間最安値の148.60 円まで下落した。その後は、米9 月消費者物価指数が市場予想を上回る結果となったことで、金利先高感が強まるとドル買いが旺盛となり149.80 円近辺まで上昇した。その後は、150 円を前に売り買いが交錯する展開が継続する中で、米長期金利が低下したことで149.50 円近辺まで下落する場面もみられたが、中東情勢が緊迫化すると主要通貨に対してドルが買われる展開となり、27 日には月間最高値の150.38 円まで上昇した。同水準では日本政府・日銀による為替介入も意識され上値の重い展開となると、月末に開催される日銀金融政策決定会合で長短金利操作の修正が議論される可能性との報から円買い戻しの動きが強まり、月末31 日には149.51 円で終了した。尚、その後開催された同会合で、金融政策の再修正がなされたものの、大きな政策変更がなかったことが円売りに繋がり、N Y 時間には151.70 円近辺まで急速に円安が進行した。
今後の見通し
 節目の150 円が本邦中央銀行の為替介入の有無を意識させる状況にあり、同値近辺での値動きが続いたが10 月の介入実績はなかった。介入効果は短期に終わるというのが市場の見方であり、当面は米国の景況感や金融政策次第という様相ではあるものの、金利差そのものが急速に縮小する展開は想像しにくく、今後も円安圏での推移を予想する。

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