貴金属市場の動向

2022年10月

田中貴金属工業株式会社 貴金属市場部 トレーディングセクション 鈴木 悠介

  • 金市場の動向
  • プラチナ市場の動向
  • 為替市場の動向

金市場の動向 10月の動き
金価格チャート
ドル建て金相場
 1,660.80ドルでスタートした10月のドル建て金相場は月初、欧米の製造業関連の経済指標が軒並み低調な結果となったことで、経済減速への不安感からこれまでのドル高に対する調整が加速、金相場は買いが旺盛となり、6日には月間最高値の1,716.00ドルまで上昇した。しかしその後は、それまでの展開を打ち消すようなFRB当局者の発言や米9月雇用統計が市場予想を上回ったことで急落し、月初と同水準まで値を下げることとなった。この雇用統計を起点に方向感が転じた金相場は、月半ばにかけて同値近辺で揉み合ったあと、米9月消費者物価指数が高水準を維持し、米FRBによる積極的な金融引き締めが継続するであろうとの見方が広がり、1,640ドル近辺まで値を下げた。その後も、米金融当局者の利上げに対する積極的な発言などを材料にドル高が進むと、21日には月間最安値の1,624.55ドルまで続落した。月末にかけて、安値を拾う動きなどから一時1,670ドル近辺まで回復する場面も見られたが、米経済指標で物価高継続が示されると、大幅な利上げ継続が改めて意識され、月末31日には1,639.00ドルまで下落して終了した。
今後の見通し
 米FRBは11月の米FOMCで政策金利の0.75%引き上げを決定した。現時点で米国のインフレはピークアウトの兆しはあれど、確認がなされたというにはまだ早く、世界的な景況感も米国の優位な情勢が続いている。これら状況からドル独歩高の地合いは継続し、金相場には弱い材料となろう。一方で、急速な利上げによる景気後退や金融市場の混乱、米国以外でも高止まりするインフレ率や地政学的な不安感は材料として大きく、比較的高い水準を維持したまま、下値を探ることとなろう。

プラチナ市場の動向 10月の動き
プラチナ価格チャート
ドル建てプラチナ相場
 月間最安値の865ドルでスタートした10月のドル建てプラチナ相場は月初、米9月ISM製造業景況指数が市場予想を下回ったことに加え、米労働省が発表した8月雇用動態調査では求人件数が大幅に減少し労働市場の軟化が示されたことで、ドル全面安となると940ドル近辺まで急騰した。その後発表された、米9月雇用統計では市場予想を上回る結果となったことで、米国の金融引き締め継続が意識され軟調な展開となると、月半ばにかけても、高水準を維持する米物価指数を背景にドル買いが強まり870ドル近辺まで下げ幅を拡大した。しかし、これまでに下値を確認してきた安心感などから、その後は安値を拾う動きから反発すると、米新規失業保険申請件数の良化や米株価の急反発を受け、940ドル近辺まで回復した。その後は、市場予想を下回る米経済指標を材料に、金融引き締めペースの減速観測が強まりドル安となると、27日には月間最高値の952ドルまで続伸した。しかし、月末にかけては、米経済指標で依然として高いインフレ圧力が示され、再び大幅利上げ継続の見方が強まると、月末31日には935ドルまで値を下げて終了した。
今後の見通し
 足元の状況だけをみると、回復の兆しをみせない欧州新車販売台数や世界的な景況感の悪化などから需要に翳りがみえる中で、上値の重い展開となっている。しかし、徐々に市場の目線は利上げ後の世界へと目を向けつつあるように見える。用途分野の広さなどを材料に、下落局面ではサポートの買いが散見される展開となろう。



為替市場の動向 10月の動き
ドル円為替チャート
ドル円為替相場
 144.89円でスタートした10月の為替相場は月初、弱い米製造業関連の経済指標や米労働省が発表した調査で労働市場の軟化が示されたことで、利上げペースの鈍化を期待したドル売りが強まり5日には月間最安値の143.95円まで下落した。しかし、予想よりしっかりした米9月雇用統計の結果などから、市場の基本認識となっている日米金融政策の方向性の違いによる円売り・ドル買いの流れは変わらず、政府・日銀介入への警戒を持ちつつも徐々に下値を切り上げる展開となると、21日には月間最高値の150.26円まで値を伸ばすこととなった。その後のNY時間にもドル買いの流れは継続、一時152.00円近辺まで上昇するも、政府・日銀が円買い介入に踏み切ったとみられ、146.50円近辺まで急落した。その後は、149.00円近辺で落ち着くと、月末にかけて米FRBが利上げペースを減速させるとの見方が強まる中で、145.50円近辺までドル売りが強まった。しかし、本邦中央銀行が引き続き大規模金融緩和策の維持と金利の据え置きを発表したことや、米経済指標でインフレ率の高止まりが示されたことで基本的な環境に変化は生まれず、月末31日には148.26円まで上昇して終了した。
今後の見通し
 米国の急速な利上げによる景気後退懸念が燻る中、11月の米FOMCで今後の利上げ幅は小規模になる可能性も示唆され、これまで一方的な展開であった基礎環境にも変化が訪れそうな気配もある。この状況であれば円が買い戻される局面もでてこようが、根本的な円安の要因としての日米金融政策の方向性の違いが解消されない限り、円買い戻しの局面の継続という展開を予測することは難しい。

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