貴金属市場の動向

2023年9月

石福金属興業株式会社 管理部資材グループ 北川 拓

  • 金市場の動向
  • プラチナ市場の動向
  • 為替市場の動向

金市場の動向 9月の動き
金価格チャート
ドル建て金相場
 1940.55ドルでスタートした9月の金相場は、1日発表の8月米雇用統計がやや弱い内容となったものの8月米製造業購買担当者景況指数(PMI)は堅調な結果となった事を受けた長期金利の上昇を眺め4日に1940ドル台を割り込んだ。7日発表の米新規失業保険申請件数も4週連続の改善となり米労働市場の底堅さを示した事も米連邦準備制度理事会(FRB)による追加利上げを想起させ、1920ドル付近まで続落した。
 その後、外国為替市場ではドルが対ユーロで軟調に転じると、ショートカバーも相まって相場は上昇に転じ9日には1930ドル付近まで回復した。
 しかし、8月米消費者物価指数(CPI)の発表を控えた警戒感から利益確定の売り等に押され徐々に値を下げると、12日には1910ドルを割り込んだ。翌13日発表のCPIの結果にサプライズは無く相場の反応は薄かったものの、14日発表の8月米卸売物価指数(PPI)や小売売上高は共に強い内容を示した事に加え、欧州中央銀行(ECB)の定例理事会での声明が今会合での利上げの停止を示唆したものと受け止められると対ユーロでドルが上昇。長期金利の上昇も相まって一時1900ドル付近まで売り込まれた。
 その後は買戻しに支えられ1920ドル台を回復すると19日、20日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を控える中、長期金利下落と対ユーロでのドルの下落を材料に20日には月間最高値である1943.35ドルまで上昇した。FOMCでは市場の予測通り、政策金利の据え置きが決定されたが会見内容がタカ派的に受け止められ金利の先高観の台頭で26日には1910ドル付近まで下落した。以降もFRB高官らから金融引き締めの継続を支持する発言が相次ぎ市場では金利の高止まり継続の見方が更に強まり27日には節目の1900ドル台を割り込んだ。月末までこの流れは続き月間最安値の1870.50ドルまで下落し、この月の取引を終了した。
今後の見通し
 9月のFOMCでは政策金利が据え置かれた一方で、金融引き締めの長期化が示唆されました。金利の先高観から総じて上値は重く推移すると考えられます。ただ、金利の高止まりによる消費の下押しリスクや中国経済の先行き不透明感等の懸念材料は支援材料になり得るものと考えられます。

プラチナ市場の動向 9月の動き
プラチナ価格チャート
ドル建てプラチナ相場
 月間最高値である983ドルでスタートした9月のプラチナ相場は、米サプライ管理協会(ISM)発表の8月米製造業購買担当者景況指数(PMI)の堅調な結果を受けドルが上昇する中、需要大国である中国の8月サービス部門購買担当者景況指数(PMI)の低下を眺めて売り込まれると8日には月間最安値である900ドルまで下落した。
 月半ばにかけては900ドル近辺で推移し、13日に米労働省が発表した8月米消費者物価指数(CPI)のコア指数低下でインフレの鈍化が示唆されると金利の先高観の後退と共にドルが対ユーロで下落。割安感から買いを集め、920ドル台を回復すると19日にはパラジウムの上昇にも連れて948ドルを付けた。
 しかし、19日と20日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見でのタカ派的な発言を受けドルが上昇すると高値警戒感も相まって21日には再び920ドルを割り込んだ。安値を拾う動きから翌22日には再び940ドルまで回復するも、複数の米連邦準備制度理事会(FRB)高官らによる金融引き締め継続支持が伝わりドルが上昇し、割高感が圧迫材料となり反落に転ずると900ドル近辺まで下落した。しかし、月末には8月米コアPCE物価指数の弱い内容を受けたドルの下落から買い戻されると923ドルまで反発しこの月の取引を終了した。
今後の見通し
 主要産出国である南アフリカ共和国の電力懸念は継続しているものの、足元の供給は安定している一方で、工業需要の低迷や堅調なドルが圧迫材料となり上値は抑えられるものと見られます。



為替市場の動向 9月の動き
ドル円為替チャート
ドル円為替相場
 145円台後半でスタートしたドル円相場は、8月米雇用統計が低調な内容であった一方で8月米製造業購買担当者景況指数(PMI)が市場予測を上回った事で休日を挟み4日に146円台前半まで上昇。6日発表の8月サービス業購買担当者景況指数(PMI)が6か月ぶりの高水準に上昇しドル買いは更に進行し7日にかけ147円台後半まで上伸した。しかし、翌8日の鈴木財務相の発言が為替介入への警戒感を誘うとドル円は反落に転じ、9日には植田日銀総裁がマイナス金利の解除を示唆した事で更にドル売り円買いが進むと11日には146円台後半まで下落した。
 その後、中旬にかけては147円近辺で推移し、14日発表の8月米卸売物価指数(PPI)の強い結果や欧州中銀(ECB)の定例理事会の声明で利上げの打ち止めが示唆されるとドルに資金が流入し147円台後半まで反発した。ドル買いの流れが続く中で19、20日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)では年内の追加利上げと来年の金利高止まりの見込みが示された一方で22日の日銀金融政策会合では金融政策の現状維持が決まると日米金利差が意識されドルの騰勢が更に強まると21日には148円台を突破。以降も複数の米連邦準備制度理事会(FRB)高官らのタカ派的な発言が相次ぐと、長期金利の上昇を眺め28日には月間最高値の149.65円を付け、月末29日には149.58円を付けこの月の取引を終了した。
今後の見通し
 9月のFOMCでは政策金利が据え置かれたものの、FRB高官らからはタカ派的な発言が相次いでおり、金融引き締めの長期化が見込まれることから概ね円安基調が継続するものと考えます。

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