貴金属市場の動向

2020年8月

株式会社 徳力本店 地金部 地金課 金塚 美智子

  • 金市場の動向
  • プラチナ市場の動向
  • 為替市場の動向

金市場の動向 8月の動き
金価格チャート
ドル建て金相場
 1,970 ドル付近で始まった8 月ドル建て金相場は、新型コロナウィルス感染再拡大に伴う世界的な景気先行き不透明感が相場を下支え。また、3 日には米トランプ政権が中国共産党の影響を受けている動画配信アプリに関する規制を強化する可能性を示唆し、米中対立激化への懸念が再浮上。これらを背景にリスク回避の金買いが続く中、一時2,000 ドルの節目を突破しました。
 5 日には依然として根強い景気先行き懸念に加え、中東レバノンでは大規模爆発事件が発生し、地政学的リスクが意識され、金買いが加速。また、米国での追加経済対策案を巡る協議難航への懸念も金買いを促し、一時2,070 ドル付近まで急伸し、史上最高値を更新しました。
 7 日に公表の7 月米雇用統計では、非農業部門就業者数・失業率共に市場予想を下回り、前月からも改善。同国の雇用情勢が回復していることを示唆する結果を受け、2,020 ドル付近まで売り込まれました。ただ、10 日には香港を巡る米中対立懸念が浮上したことで、金買いに転じ、2,040 ドル付近まで水準を戻しました。
 11 日には、ロシアが世界で初めて新型コロナ向けワクチンを承認。十分な情報がなく、評価には懐疑的な見方があるものの、ワクチン投与開始への期待感から欧米株式が上昇したことが金相場を圧迫。一時1,900 ドル割れまで大きく売り込まれ、1 日で100 ドル超水準を切り下げる場面が見られました。その後は、急速に進んだ売りに対する反動買いや米中関係悪化懸念などが相場を支えて1,970 ドル付近まで水準を戻すも、米国経済指標の良好な結果を受けた売りに押され、1,940 ドル付近まで下落し、同水準での推移が続きました。
 17 日には、米国が中国大手通信機器企業への規制強化を公表し、米中貿易摩擦激化懸念が再燃。リスク回避の金買いが優勢となる中、再び2,000 ドルの節目を回復し、上伸しました。ただ、難航している米追加経済対策について救済案での合意の可能性が報じられ、リスク回避姿勢が後退。また、注目されていた7 月米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、追加金融緩和への期待が薄れるような内容が見受けられたことなどを背景に金売りが加速。一時1,930 ドル割れまで売り込まれました。その後は、新規手掛かり材料に乏しい中、1,930 ドル~ 1,960ドル付近での小動きが続きました。
 27 日のジャクソンホール経済シンポジウム内でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長講演にて、事実上のゼロ金利政策長期化を示唆したことを受け、外為市場でドル安が進行。割安感から1,980 ドル台まで上伸するも、経済や雇用の回復への期待感などを背景とした売りに一時1,910 ドル台まで大きく水準を切り下げました。
 ただ、月末にかけては、安倍首相辞任表明による政治的混乱への懸念、米中対立激化懸念、主要国での低金利政策の長期化予測などを相場支援材料に金買いに1,960 ドル台まで水準を戻し、この月の取引を終えました。
今後の見通し
 新型コロナウィルスの影響による景気低迷の長期化、主要国での金融緩和政策の継続が今後も相場下支え材料となるほか、米中関係悪化懸念や地政学的リスクも意識され続けている中では、底堅い推移が続くと考えられます。

プラチナ市場の動向 8月の動き
プラチナ価格チャート
ドル建てプラチナ相場
 910 ドル付近で始まった8 月ドル建てプラチナ相場は、新型コロナウィルス感染再拡大による世界的な経済先行き懸念や米中関係悪化懸念の再浮上などを背景に上昇が続く金に追随。920 ドル台まで水準を切り上げました。また、米国での追加経済対策案を巡る協議難航懸念や地政学的リスクなどを相場支援材料に上昇基調が続き、一時980 ドル付近まで上伸しました。
 7 日に公表された7 月米雇用統計の前月から改善を示す結果受けた米国株式の堅調推移なども支援材料に一時1,000 ドルの節目を突破する場面が見られました。
 ただ、直近高値を更新したことによる利益確定の売りなどに押され、970 ドル付近まで大きく水準を切り下げました。その後は、香港を巡る米中関係悪化懸念などを背景に金が買いに転じる中、プラチナも追随。1,000 ドル付近まで水準を戻しました。
 11 日には、新型コロナ向けワクチン開発・供給開始への期待感から金が急落する中、プラチナも追随。1,000 ドルの節目を割り込み、一時930 ドル割れを試す付近まで大きく売り込まれました。安値を付けた後は、反動買いやドル安、金の反発などを手掛かり材料に980 ドル付近まで水準を切り上げるも、パラジウムの急落などに押されて950 ドル付近まで売られ、同水準での推移が続きました。
 その後は、独自の新規手掛かり材料に欠ける中、金やパラジウムの値動きに連動する展開に。金買いが優勢となった場面では980 ドル付近まで上伸するも、米FOMC 議事要旨の内容などを受け、金売りが加速するとプラチナも追随。また、欧米株式の軟調推移やパラジウムの急落を嫌気した売りにも押され、一時900 ドル割れを試す付近まで水準を切り下げました。
 月末にかけては、米国など主要国での景気回復への期待感が相場を下支えする一方で、新型コロナウィルスの影響が続いていることを背景にプラチナ需要減退の見方が浮上。強弱材料が入り混じる中、920 ドル~ 940 ドル付近での推移が続き、930 ドル付近でこの月の取引を終えました。
今後の見通し
 依然としてプラチナ独自の材料には乏しいため、新型コロナウィルスの影響による景気低迷の長期化、米中関係悪化懸念、地政学的リスクなどを背景に底堅く推移している金の値動きに連動する展開が続くと考えます。



為替市場の動向 8月の動き
ドル円為替チャート
ドル円為替相場
 前月末に急速に進んだ円売りの流れが続き、106.10 円台で始まった8 月ドル円相場は、3 日に公表の主要海外経済指標の良好な結果を受け、一時106.40 円台まで円安に進みました。ただ、急速に進んだ円安に対する警戒感などから円の買戻しが入り、106 円付近まで水準を戻しました。
 4 日には、米国の追加経済対策案を巡る協議難航への警戒感や米中対立激化懸念などを背景に円買いが優勢に。一時105 円台半ばまで円高に進み、その後は105円台後半から106 円付近でこう着商状が続きました。
 米雇用統計の前哨戦とされるADP 全米雇用報告では、民間就業者数が市場予想を大きく下回る結果となり、リスク回避の円買いが加速。105 円台前半まで円高に進むも、6 日に公表の米新規失業保険申請件数の良好な結果を受け、円売りに転じました。また、7 日に公表の7 月米雇用統計の市場予想を上回る結果も円売り材料となり、106 円台前半まで円安に進みました。
 11 日にはロシアが新型コロナ向けワクチンを承認したとの報が入り、供給への期待感から欧米株式が堅調推移となる中、円売りが優勢に。また、主要米国経済指標の総じて良好な結果も円売りを加速させ、一時107 円付近を付ける場面が見られました。ただ、その後は、米国の追加経済対策案を巡る協議難航が継続していることなどを背景に円買いに転じ、106 円台半ばまで円高に進み、同水準での推移が続きました。
 17 日には、米国が中国に対する輸出規制の更なる強化を公表したことを受け、米中関係悪化懸念から円買いが加速し、105 円台前半まで円高に進みました。ただ、円買い一巡後は、米国長期金利の上昇を眺めた売りに106 円付近まで戻し、その後は106 円台前半での推移が続きました。
 27 日のパウエル米FRB 議長講演では、ゼロ金利政策維持を示唆する発言があり、一時106 円割れまで円買いが進むも、経済や雇用の回復への期待感や長期金利の上昇を眺め、円売りが優勢に。一時107 円を試す付近まで円安に進みました。
 ただ、28 日には安倍首相辞任の報道が入り、大規模金融緩和政策「アベノミクス」の終焉や政治的混乱が意識される中、円買いが加速し、105.10 円台まで急速に円高に進みました。その後は、安倍首相辞任後も現行の政策が維持されるとの見方が浮上。過度な円買いに対する反動から売り優勢となる中、105.80 円台まで水準を戻し、この月の取引を終えました。
今後の見通し
 新型コロナウィルス感染拡大傾向が続いていることによる景気低迷長期化懸念や米中関係悪化懸念などが円買いを支える一方で、主要国での低金利政策継続による経済回復への期待感などを背景とした円売りも入る中では、方向感の出にくい展開が続くと思われます。

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