2023年1月
田中貴金属工業株式会社 貴金属市場部 トレーディングセクション 鈴木 悠介
- 金市場の動向
- プラチナ市場の動向
- 為替市場の動向
金市場の動向 1月の動き

ドル建て金相場
1,835.05ドルでスタートした1月のドル建て金相場は月初、米長期金利の低下や米利上げ幅縮小観測を材料に値を伸ばし1,860ドル近辺まで上昇した。しかし、米12月ADP雇用統計が市場予想を上回る内容だったことで、米FRBが引き続き積極的な金融引き締めを実施するのではとの見方が強まり、米長期金利が上昇する中で急速に下げ幅を拡大し、5日には月間最安値の1,834.00ドルまで下落した。その後の米12月雇用統計も強含む結果が示されたが、その後発表された米経済指標が景気減速の兆候を示したことで、ドル全面安となり金相場は1,880ドル近辺まで急騰した。中国人民銀行が12月にも金を買い増ししたという報道なども買いを勢いづける材料であった。月半ばにかけては、米12月消費者物価指数の上昇率が鈍化したことを受け、米利上げ幅の縮小が意識されたことで一段高の展開となり節目の1,900ドルを回復した。その後、同値近辺で揉み合いが続くと、月後半にかけて弱い経済指標が相次いだことからドル売りが強まり1,930ドル近辺まで値を伸ばし、24日には月間最高値の1,936.50ドルまで上昇した。月末にかけては、利食い売りから1,900ドル近辺まで下落したものの、市場予想を下回る米経済指標を材料に買い戻され、月末31日には1,923.90ドルで終了した。
今後の見通し
米FRBは2月のFOMCで利上げ幅を2会合連続で縮小。0.25%とし4.50~4.75%としたものの、継続的な引き上げが適切とし、今後複数回の利上げがあることを示した。市場の意識としても5%台中盤までで打ち止めとなり、効果確認に入るという見方が大勢であり波乱を含む材料ではないものの、利上げ事態を継続するという状況は金利のつかない金相場にとっては向かい風になると思われる。そんな中で、依然として高インフレの終焉時期や経済の先行きに対する不透明感は拭えず、方向感の出にくい相場展開となるか。
プラチナ市場の動向 1月の動き

ドル建てプラチナ相場
1,086ドルでスタートした1月のドル建てプラチナ相場は月初、市場予想を上回る米経済指標を受けドル高が進行したことで一時1,060ドル近辺まで値を下げた。しかし、弱い米ISM非製造業景況指数を材料にドル売りが強まり、それまでの下げ幅を打ち消し月初水準まで回復した。その後は、米FRB当局者の発言を材料に、利上げペース減速観測が強まり、景気の先行きに対する過度な警戒感が和らいだことで、11日には月間最高値の1,100ドルまで続伸した。同水準では利食い売りが強まり徐々に上値を削ると、弱い米経済指標や米FRB当局者の利上げに積極的な発言から米株価急落すると、これを嫌気した売りから1,020ドル近辺まで下落した。月後半にかけて、利上げ観測が一服したことで一時1,060ドル近辺まで回復したものの、相場を支える程の材料も無く、ドルが強含んだことで上値を削ると、月末31日のロンドン時間午前に月間最安値の998ドルまで下落した。1,000ドルを割る水準では買いが強まり、同日午後には1,004ドルまで反発して終了した。
今後の見通し
主要生産国である南アフリカの大手鉱山会社減産から底堅く推移していたが、1,100ドルを超える水準では相場を下支えする程の材料とはならなかった。景況感の良し悪しに左右されるであろうが、この状況が一服すれば上値の重い展開となるだろう。
為替市場の動向 1月の動き

ドル円為替相場
131.01円でスタートした1月の為替相場は月初、市場予想を上回る米12月ADP雇用統計などの結果を受け、金融引き締め政策の長期化が意識されると、ドル買いが強まり6日には月間最高値の133.74円まで値を伸ばした。その後は、低調な米ISM非製造業景況指数を嫌気した売りから値を下げ始めると、米12月消費者物価指数の伸び率鈍化を材料に、米利上げペース減速観測が高まり急速に下げ幅を拡大、16日には月間最安値の127.92円まで下落した。月後半にかけては、日銀金融政策決定会合で、一部予想されていた金融緩和策の修正はなされず、緩和継続となったこと受け、一時131.60円近辺まで急速に値を戻したが、その後発表された米経済指標が冴えない結果だったことでドル全面安となると、アジア時間の上げ幅を全て打ち消し128.50円近辺まで下落した。月末にかけては、本邦中央銀行総裁が世界経済フォーラム年次総会で、極めて緩和的な金融政策を継続すると述べたことで円売りが強まり、再び131.00円を試す水準まで値を伸ばした。同水準では売りが強まり130.00円近辺で落ち着くと、2月の米FOMCを前に売り買いが交錯する展開が続き、月末31日には130.47円で終了した。
今後の見通し
2月の米FOMCで利上げ幅は縮小されたものの、利上げは継続し今後も段階的な引き上げが示唆された。しかしながら、為替相場は円高・ドル安に進み、中長期的な目線が意識された相場展開となっている印象を受ける。展開次第では大幅な調整が入り、大きく円安方向に動く可能性もあり警戒が必要か。